『mHealth Watch』では、ここ最近で公開されたニュースから「注目ニュース」をピックアップし、独自の視点で解説していきます。
今回注目したニュースはこちら!
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“モバイルリマインダーとインセンティブを組み合わせて、地方の予防接種率が向上”
Pediatrics誌で、ジョンズ・ホプキンズ医療部門と、子供の健康推進に携わるインドの非営利団体Bal Umang Drishya Sanstha (BUDS)の研究員らによる共同研究が発表された。BUDSは、貧困の激しい地域における幼年期の予防接種率向上を目指している。
「予防接種やブースター投与のスケジュールは、特定の期間中に実行された場合に最も効果を発揮するように考案されており、インドの田舎のような物資の乏しい地域でも、所帯数の90%が携帯電話を所有していると推定されます」とSanjay Jain博士は述べた。Jain博士はジョンズ・ホプキンズ大学医学部の小児科の教授で、今回の研究論文の筆頭著者である。
この研究では、地方の田舎に住む2歳以下のインドの子供達608人を募って1つのコントロールグループ、つまり2つの介入群を対象に行った。1つの群では、携帯電話にリマインダーを送り子供達の保護者に幼年期の予防接種を促し、2つ目の群ではリマインダーと共にコンプライアンス関連の報奨(この場合は約30分間の電話使用で、50セント/30ルピー相当)も支給された。注目した主な結果は予防接種の普及率。
対象条件を満たした549人の子供たちでは、中間の年齢層が生後5ヵ月だった。この子供たちは、292日間の中期間で研究の対象とされた。約84%の子供たちの母親が正規の教育を受けておらず、85.8%の子供たちの家庭が、総収入1ヵ月およそ375ドル(25,000ルピー)以下だった。
対象となったすべての年齢グループのうちの中間年齢層に関する予防接種普及率が33%であったのに対し、コントロールグループ内での予防接種率は41.7%に増加した。リマインダーだけを受け取ったグループ内の中間年齢層予防接種率は40.1%に増加したにとどまったが、保護者へのリマインダーに加えてインセンティブも受け取った方のグループは、中間年齢層予防接種率が50%まで上昇した。研究員によると、リマインダーに追加されたこのコンプライアンス関連の報奨が、予防接種普及率の増加や、最適期間内における予防接種率のやや緩やかな増加の独立要因となったようだ。
「日々使われるデバイスに加えた単純な報奨が、基本的な大衆保健の向上にインパクトを与えられるとは、全く新しい発見です」とIbukun Akinboyo博士は述べている。Akinboyo博士はジョンズ・ホプキンズ大学医学部の小児感染病のポスドク研究員で、研究論文の著者の一人。「広く普及している携帯電話などの入手可能な物資をもっと活用することによって、予防接種の普及を向上させることができ、予防可能な小児感染の発生率減少につなげたいというのが、この研究のハイライトです」と述べた。
記事原文はこちら(『mobihealthnews』2018年3月14日掲載)
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『mHealth Watch』の視点!
今回は予防接種に関するニュースです。
日本でも以前はインフルエンザの集団予防接種が義務化されていましたが、1994年に予防接種法が改正され、集団予防接種が中止されてしまいました。当時は、予防接種への効果を疑う声もありましたが、現在ではそれなりに効果も高かったのではないかとの意見も聞かれます。
感覚的なコメントで恐縮ですが、昔に比べて身近な人がインフルエンザになったとの声を聞くようになったと思っています。もちろん、以前も中学生までが義務化でしたので、大人は皆が予防接種をしていたわけではないですが、こう思うのは私だけでしょうか!?
義務化でなくなると当然子供でもしない人は増えていきます。これだけ情報や医療環境が整った日本でも、実際に予防接種しようとすると、タイミングによっては薬品が足りない、混んでいて受けたいときに接種できないなどの課題はあります。
インドやアフリカの農村部などでは、日本とはかなり事情の違う課題があります。予防接種の必要性が知りたいときに正確に伝わらない。いつやるべきか情報がない。などが重なり、生活の中で優先事項にならないようです。
今回はリマインダーとインセンティブをかけ合わせたアプローチが行われました。ここで気をつけないといけないのは、“インセンティブが最も効果的”と短絡的に捉えないことです。
ターゲットの健康に対する行動変容はどの段階なのか? 生活環境などから何に意識を向けやすいか? などを踏まえてアプローチ策を検討すべきだからです。
インセンティブは使い方によってはとても効果的です。使い所を見極めていきたいですね。
『mHeath Watch』編集 渡辺 武友
株式会社スポルツのクリエイティブディレクターとして、健康系プロダクト、アプリ、映像などの企画・制作ディレクションを手掛ける。「Health App Lab(ヘルスアプリ研究所)」所長として健康・医療アプリの研究発表を行う。またウェアラブル機器、ビジネスモデルの研究を行ない、健康メディアでの発表や、ヘルスケアITなどで講演を行う。
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