『mHealth Watch』では、ここ最近で公開されたニュースから「
今回注目したニュースはこちら!
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“医療AIで革命が起こる可能性”
テクノロジー企業がAI、中でも医療に関するAIに参入するというニュースが様々出てきている。これは医療業界と患者にとってとても有益なことだと言える。しかし、AIの時代を導くには、まず克服すべきいくつかの障害がある。
医療の専門家は現状をどのように把握しているか?3人の専門家の意見を伺った。
Jabe Wilson博士(Elsevier社コンサルティングディレクター)は、がんの早期発見につながるAIへの投資を歓迎している。
しかし、がんが早期発見される患者が多くなればなるほど、臨床医が必要になる(すでに内視鏡医は不足している)。また、より多くのスキャナー、薬品、薬剤師、外来診療所、管理職員、劇場、病院のベッド、病棟、掃除機などが必要になってくる。これらへの対応は必要不可欠となる。
Debbie Cameron氏(Cancer Research UK最高経営責任者)は、見かけ上の生存率の向上に気をつけなければならないと警鐘を鳴らす。
癌の早期診断の利点は“5年以内の生存率が向上する”ということである。AIにより早期発見がなされれば、生存率が向上することが期待されるが、リードタイムバイアス(がんの発見から死亡までの時間を比較する場合、早期発見された時間の分だけその患者の生存時間が見かけ上長くなること)に陥る可能性が高くなってしまう。そのため、早期発見された患者にこそ効果的な治療が必要になり、その環境を整えなければならない。
Peter Trewby氏(イギリス医師協会会長)は、現時点では癌に注目が集まっているが、それ以外にも慢性疾患を早期に発見するためにAIを使用し、死亡率を低下させる方向性を賞賛している。
肺動脈性高血圧症(PAH)のような珍しい疾患は、そもそも存在がよく知られておらず、発見が遅れることで平均余命を減らし、患者の日常生活に深刻な影響を与える。早期発見と効果的な治療の早期開始は、PAH患者の生存率の改善の機会を劇的に最適化する鍵であり、AIがまさしく必要とされている領域と考えられる。
記事原文はこちら(『The Guardian』2018年5月22日掲載)
※記事公開から日数が経過した原文へのリンクは、正常に遷移しない場合があります。ご了承ください。
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『mHealth Watch』の視点!
AIは大きな可能性を秘めていますが、単に「プラグ・アンド・プレイ」(つなげるだけですぐに使えるようになること)で利用できるようにはなりません。医療分野でのAIは、技術的に進歩するだけではなく、専門的で科学的な知識をもとにした調整を必要としているためです。そして、実際に現場に導入された場合は、現在の治療環境を大きく変えなければならないことも考えられるためです。
この記事では、AI導入による治療リソースの不足の問題、リードタイムバイアスの問題、がん以外にも慢性疾患が存在している問題の3点が取り上げられました。これはイギリスの例ではありますが、全世界普遍的な問題でもあります。
AIは、その開発だけに注目されがちですが、医療において実際に導入されたらどうなるのか、どのような問題点があるのか、といった議論まで踏み込まれてきているというのは大きな進歩です。日本においても医療現場にAIを導入することは近い将来行われることになります。その前段階の議論と問題点の共有は、ぜひ行われておくべきだと思います。
『mHeath Watch』編集 遠藤 辰哉
キュービックシー株式会社代表取締役。電子カルテに代表される院内情報システム、並びに患者向けの医療情報提供をメインテーマとしている。併せて、医療・介護/情報/インターネットがまたがる分野の現状分析/調査・解決策の模索に力を入れている。医療の視点からmHealthの動向をサーチする。
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