『mHealth Watch』では、ここ最近で公開されたニュースから「注目ニュース」をピックアップし、独自の視点で解説していきます。
今回注目したニュースはこちら!
============================================
“スマートフォンのカメラで爪を撮影することで貧血を検出へ”
Natureに発表された新しい調査によれば、スマートフォンのカメラを使った新しいアプリは、将来的に貧血を遠隔検査する鍵となる可能性がある。
貧血とそうでない人を含む100名を対象に行われた実験では、爪の色で貧血症を診断するスマートフォンアプリの正確性が検証された。結果、アプリは貧血症患者の97%を検知することができた。その正確性はCBCヘモグロビン濃度に換算すると、1デシリットルあたりの2.4ヘモグロビン(Hgb)グラムの誤差だという。
本研究の著者は、「貧血症は世界中に広く患者がおり、幼い子供や高齢者、妊婦を中心に20億人が苦しんでいます。スマートフォンで撮った写真で検査ができる、この非侵襲性の技術は、様々なリスクを抱える人から一般の人まで、多くの人々が利用できる適性検査のツールとしての可能性があります。安価で、外部機器の接続やキャリブレーションの必要なしに貧血症の診断ができることは、従来のPOC検査の代替手段としては大幅な改善になります」と述べている。
このアプリは、専用の機器と医療環境を必要とする従来の貧血の検査に取って代わるものとしてデザインされた。システムはスマートフォンのカメラを利用し、患者の爪の写真を撮り、アルゴリズムを用いて貧血の分析を行う。研究者は品質コントロールのプログラムを内蔵し、個人間での爪の形や色の差が、検査結果に影響を与えないようにしたとする。
記事原文はこちら(『mobihealthnews』2018年12月6日掲載)
※記事公開から日数が経過した原文へのリンクは、正常に遷移しない場合があります。ご了承ください。
============================================
『mHealth Watch』の視点!
スマートフォンアプリが登場した初期のころ、皮膚の症状に対してスマートフォンで撮影して診断できる可能性があると話題になり、皮膚の症状を撮影するアプリがいくつか登場しました。
その後、なかなか発展しなかったのには理由が2つあります。1つは、アプリだけで診断までしてしまう、機器だけで勝手に医療行為をしてしまうという問題です。このような行為は、米国のFDAだけでなく各国でNGが出ました。そのため、現在は撮影した画像を医師が確認する遠隔医療として使われています。
発展しなかったもう1つの理由は画像の精度です。撮影したものを判断するにはできるだけ同条件(画質や明るさ、色味など)である必要がありますが、個人撮影では厳密性を担保することができませんでした。
現在はスマートフォンカメラの画質が格段に上がったことも貢献していますが、撮影上のルールの徹底やAIによる撮影状態による補正を行うことで対応しています。
貧血を診断するアプリも以前から研究されています。2016年、ワシントン大学の研究者が、スマートフォン動画撮影機能と後付けのLEDライトを利用して撮影することで、非侵襲で貧血症の検知方法を開発しました。
世界的にも遠隔医療は今後のトレンドになります。この分野の研究は益々盛んに行われていくことでしょう。
『mHeath Watch』編集 渡辺 武友
株式会社スポルツのクリエイティブディレクターとして、健康系プロダクト、アプリ、映像などの企画・制作ディレクションを手掛ける。「Health App Lab(ヘルスアプリ研究所)」所長として健康・医療アプリの研究発表を行う。またウェアラブル機器、ビジネスモデルの研究を行ない、健康メディアでの発表や、ヘルスケアITなどで講演を行う。
Comments are closed.