『mHealth Watch』では、ここ最近で公開されたニュースから「注目ニュース」をピックアップし、独自の視点で解説していきます。
今回注目したニュースはこちら!
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“調査:スマートフォンアプリからEHRデータをダウンロードする人はほとんどいない”
連邦政府の医療政策立案者は、スマートフォンのアプリを介して患者が電子健康データ(EHR)に簡単にアクセスできる環境整備を推進している。 民間セクターもこれらの取り組みで役割を果たしており、Appleは2018年1月に健康記録機能を開始して、現在200人以上の医療施設がこのプロジェクトに参加している。
では実際に、患者がこれらのアプリを使用して、自分の健康状態の記録を取得しているのだろうか?
JAMA Network Openで公開された12の早期採用医療システムを調べた評価によると、普及率は低いが、数は増え続けている。
「『Fast Healthcare Interoperability Resources(以下FHIR)API』を介して臨床データにアクセスし、スマートフォンアプリケーションでこのデータを使用することで、個人が健康データの正確性をより簡単に確保し、高い価値の医療サービスを選ぶようになることを期待しています。またEHRに入力するためのデータを繰り返し提供することを避けることができ、臨床研究への参加に積極的になると予期されています」と研究者は述べた。
研究者は、『FHIR API』を使用してEHR情報をダウンロードするオプションを患者に提供する12の医療システムを調査した。
2018年3~12月まで、特定の月に病院の患者ポータルにログインした患者の平均0.7%は、『FHIR API』のユーザーだった。 しかし、研究者はAPIを介して自分の情報にアクセスする患者が増えていることを発見した。医療システムごとに1か月あたり156人の新規ユーザーが増加していた。
調査によると、一部の医療システムでは、10か月の間に『FHIR API』ユーザーの数が3,000人に増加したが、他の医療システムのユーザーは500人未満だった。 12の医療システムの平均は、12月までに約1,500人の新規ユーザーとなった。
「まず最も重要なことは、データを取得して患者に役立つものに変換することができる、より多くのアプリが必要だということです。現在、利用できるアプリはほんの一握りであり、それらの機能は患者が患者ポータルでアクセスできるものを遥かに超えているわけではありません」と研究者は述べました。
患者にこの新しい機能を採用する明確なインセンティブがないため、医療システムと医療ITベンダーは、この機能を患者に販売するためにより優れた取り組みをする必要がある。
記事原文はこちら(『FierceHealthcare』2019年8月17日掲載)
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『mHealth Watch』の視点!
現在米国ではEHRの一部を患者に開放することで、患者の治療や健康管理に活かしたり、患者が日々の活動データを連携することで、医療提供者が患者データを治療や健康管理に活かそうとの動きが進んでいます。
EHR(医療情報)にPHR(患者健康管理情報)を組み合わせた機能で、データが活用されれば、多くの課題に活かせる可能性があります。
問題は「医療提供者と患者それぞれが、この仕組みを使うことの必然性をどこで得られるか?」になります。“データを入れていけば、何かに役立つ”では、利用には繋がりません。
これは2008年のPHR導入時におきた問題と同じです。当時オンラインで複数のデータを一元管理できることは、開発者視点では画期的でしたが、ユーザー視点では特に利点はありませんでした。
当時Googleも「Google Health」をβ版として提供していましたが、2012年に撤退することとなりました。多くの企業は撤退時は静かに終了していきますが、Googleは撤退時に“PHRは、人生を変えるほどの大病になった人以外は必要ではない”とコメントしました。この言葉が仕組み優先の難しさを物語っていると言えるでしょう。
日本国内でも、いまだ似たようなシステム連携の話しを毎年聞きます。そのほとんどが仕組み優先の取り組みであり、ユーザーの利用率が上がらないことに悩んでいることが多いです。
どんなに仕組みを簡素化しても、必然性を感じなければ利用するユーザーにとって負担でしかありません。まずはユーザー視点で、どんな利点があるのか?を明確にしてからシステム化しないと、これを導入して喜ぶのはシステム開発を依頼されたシステムベンダーだけとなってしまいます。もう同じ過ちは繰り返すことのないようしたいものです。
『mHeath Watch』編集 渡辺 武友
株式会社スポルツのクリエイティブディレクターとして、健康系プロダクト、アプリ、映像などの企画・制作ディレクションを手掛ける。「Health App Lab(ヘルスアプリ研究所)」所長として健康・医療アプリの研究発表を行う。またウェアラブル機器、ビジネスモデルの研究を行ない、健康メディアでの発表や、ヘルスケアITなどで講演を行う。
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