『mHealth Watch』では、ここ最近で公開されたニュースから「注目ニュース」をピックアップし、独自の視点で解説していきます。
今回注目したニュースはこちら!
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“FDA、『Digital Health Center of Excellence』を設立”
FDA(アメリカ食品医薬品局)は、FDAと外部の利害関係者がデジタルヘルステクノロジーを促進するのを支援することを目的に『Digital Health Center of Excellence(デジタルヘルス研究センター)』の立ち上げを発表した。
医療機器・放射線保健センター(CDRH)内にある『Digital Health Center of Excellence』(DHCE)では、「モバイルヘルス機器や、医療機器としてのソフトウェア(SaMD)医療機器として使用する場合のウェアラブル端末、および医療製品の研究に使用される技術」」といった多様なテクノロジーに焦点を当てていく、とFDAは語っている。新センターの所長は、これまでCDRHのデジタルヘルス部門のディレクターを務めてきたBakul Patel氏が務める。
「今回の設立発表は、デジタルヘルス関係のテクノロジーへの包括的なアプローチが新たな段階に入ったことを示すもので、これからは自分の健康についてより多くの情報に基づいた決定を下せるよう消費者を支援し、また生命を脅かす病気の予防、早期診断の促進や従来のケア環境の外での慢性疾患管理のための新しい選択肢を実現するため、テクノロジーの可能性を最大限に追求していく時代になるでしょう」とFDAコミッショナーのStephen M. Hahn博士は声明の中で述べた。
Stephen M. Hahn博士は「DHCEは一元化された専門知識を提供し、デジタルヘルスのイノベーター、一般市民、およびFDAスタッフのためのデジタルヘルス関連のテクノロジーとポリシーの情報源として機能します」とも述べている。
FDAは、DHCEに関して多岐にわたる目標を持っている。同研究センターの目的は、FDAがデジタルヘルスの管理を見つめ直し、業界内のベストプラクティスを推進し、必要に応じて技術的なアドバイスを提供し、またFDA内のデジタルヘルスに焦点を当てたイニシアチブの指揮官として全般的に機能するのを支援することなのだ。
ただし、その最新のデジタルヘルス研究センターに未だ進行中の面が相当にあることを認め、「DHCEにはまだ準備中の多くの側面がある」とも述べている。その点についてFDAは、DHCEがデジタルヘルスの専門家のネットワークを構築し、「協調的コミュニティ」として知られる継続的なフォーラムを通じて、ステークホルダーたちがデジタルヘルスに関する懸念、経験、優先事項を共有する機会を作っていくだろう、と述べている。そこから、DHCEは戦略的なデジタルヘルスイニシアチブとパートナーシップを立ち上げ、自身の活動を告知し、デジタルヘルス関連テクノロジーのためのレギュラトリーサイエンス研究を促進していくことを目指している。
注目すべきこととして、DHCEは、ソフトウェアエンジニア、AIエンジニア、セキュリティ研究者、デザイナー、および製品マネージャーにも自らの活動の輪に加わるよう呼びかけている。
「DHCEは、新型コロナウイルス感染症の流行に対応するものを含め、次々に開発される多彩なデジタルツールの急増する使用例からデータを収集・分析する上で重要な役割を果たすでしょう。 FDAには、デジタルヘルスソリューションの有効性を分析し、効果と患者の安全性の両方を改善してきた経験があります」と、コネクテッドヘルス・イニシアティブ業界グループのエグゼクティブディレクターMorgan Reed氏は、FDAのニュースを受けて発表した声明で述べている。
Reed氏は「DHCEはまた、デジタルヘルスを推進するためのより大規模なコラボレーションに向けて、業界、政府、および学界を統合するのに適した立場にあります。DHCEと協力して、デジタルヘルステクノロジーの使用を継続的に推進する機会を私たちは楽しみにしています」とも記している。
Epstein Becker & Green社で医療機器とFDAの規制問題について助言を行っているBradley Merrill Thompson氏は、新設のDHCEについて、慎重ながらも楽観視していると語った。組織の改編によって、デジタルヘルスに関する問題に、また全般的な組織の有効性に、FDA内でより多くの予算とスタッフの関心が向けられるようになる可能性があるが、公式発表とウェブサイトだけで実際のFDAの本気度を判断するのは難しい、とのことである。
「新センター設立は実はそのかなりの部分が事前認証プログラムの売り込みのためではないか?その新しい権限には連邦議会の承認が必要だからという政治的な動機があるのではないか?という心配はあります」とThompson氏は述べた。「私は、FDAがあるべき順番を取り違えて、販売の許可をまだ受けていな段階で、さらには、連邦議会がそうしたプログラムのための高度な設計特性を特定さえもしていない段階で、事前認証プログラムを開発しようとしていることに引き続き懸念を抱いています」
記事原文はこちら(『mobihealthnews』2020年9月22日掲載)
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『mHealth Watch』の視点!
ついにFDAでもデジタルヘルスに関する専門の組織を立ち上げました。今年に入りCOVID-19により、今までと違う環境下で必要とされるものも急速に変わってきたことで、FDAでも今までのような対応では市場に応えられない状況だったことが想定されます。
同じようなタイミングで日本でも動き出したのがデジタル庁です。もちろん、FDAのDHCEはデジタルヘルスに特化した組織となるので、意味合いが違いますが、いずれもデジタルを今までの枠組だけで議論するのには無理があるために、デジタルに適した判断ができるよう立ち上げた(デジタル庁はこれからですが)ということになります。
日本のデジタル庁は、教育と医療が重点分野になると、平井卓也デジタル改革担当大臣がモバイルシンポジウム2020の講演にて際述べていました。講演したのが9月12日のため、菅内閣が発足されたのが9月16日ですから、デジタル改革担当大臣就任直前の話しになります。その講演の中では、デジタル庁がどうあるべきか、すでに明確になっていた印象でした。(詳しくは10月6日掲載の「『Mobile Health Symposium 2020』レポート【1日目-1】」をご覧ください)
おそらくFDAのDHCEにも共通することですが、政府の取組みだからと、スキのないようキレイに設計できてからやるでは、いつまで経っても進まない、となってくるでしょう。平井卓也デジタル改革担当大臣も述べているいるように「患者が一番喜ぶもの、医療機関が扱いやすいものから進めていく」との考えのもと、まずは実行していかないとデジタルヘルスは立ち上がってはいかないのだと思います。
『mHeath Watch』編集 渡辺 武友
株式会社スポルツにて健康ビジネスにおけるマーケティングに関するコンサルティング、一般社団法人 社会的健康戦略研究所の理事として、本質的健康経営の社会実装方法の研究を行う。またウェアラブル機器、健康ビジネスモデルに関する健康メディアでの発表や、ヘルスケアITなどで講演を行う。
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