『mHealth Watch』では、ここ最近で公開されたニュースから「注目ニュース」をピックアップし、独自の視点で解説していきます。
今回注目したニュースはこちら!
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“研究:ウェアラブルは外傷後の痛み、不安に直面している患者を検出するのに役立つ”
JAMA Psychiatryに掲載された研究によると、ウェアラブルデバイスはトラウマ的な出来事の後に睡眠障害、痛み、不安に苦しんでいる患者を検出して観察するのに役立つ可能性があるとしている。
この研究では、自動車事故、身体的暴行、性的暴行、重大な落下事故や大規模な災害などの心的外傷ストレスにさらされた後、救急外来を受診した2,000人以上の参加者を8週間追跡調査した。調査対象のほとんどの人が自動車事故からの回復途中にあった。
参加者は、Verily Life Sciences社の『Study Watch』を装着し、1日21時間以上装着するよう指示された。研究者たちは、痛み、うつ、不安、睡眠障害など、心的外傷後の神経精神医学的な後遺症(APNS)の症状に関する8つの有意なバイオマーカーを発見した。
24時間活動量の減少は痛みの重症度と関連しており、6つの安静時活動量指標は痛みの経時変化と関連していた。また、睡眠バイオマーカーの1つである睡眠中の覚醒回数が、痛み、睡眠、不安の変化と関連していることがわかった。
「バイオマーカーや症状の変化に関するカットオフ値が単純であることから、これらのバイオマーカーは、これらの領域で良好な回復が見込まれ、さらなる評価を必要としない患者を特定するための初期スクリーニングツールとして有用である可能性が示唆される。臨床の場では、外傷後の症状が改善しているか悪化しているかを、患者や医師が識別するための補助的なデータとして役立つ可能性がある」と、同研究に関わる著者は書いている。
「念頭に置くべきは、個々の安静時活動バイオマーカーとAPNSの転帰との関連性は小さく、APNSの症状変化に対して高い陽性および陰性予測値を示したバイオマーカーは1つもないことである。このことから、これらのバイオマーカーは、自己申告などの他の尺度を補強するために使用すれば、最も有用である可能性が高い」と述べている。
研究者達は、参加者全員が救急外来を受診し、かつ、ほとんどが交通事故の生存者であったため、データが他の外傷患者に一般化できない可能性があるなど、この研究の限界についていくつか指摘している。
本研究は外傷後8週間に限定されており、解析にはウェアラブルデータと自己報告データの両方が必要であった。
また、本研究では、より社会経済的に不利なグループを対象としていることも指摘されている。参加者のほとんどは女性で、半数が黒人、34%が白人、11%がヒスパニックであった。さらに、80%近くが大学を卒業しておらず、64%が年収3万5,000ドル以下であった。
「トラウマとなる出来事を経験したほとんどの人、そしてトラウマとなるストレスの後に救急外来を訪れる人の多くは、1つ以上の持続的なAPNSに悩まされている。これは、社会経済的に不利な立場にある人々に特に当てはまる」と研究者は書いている。
記事原文はこちら(『mobihealthnews』2023年1月17日掲載)
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『mHealth Watch』の視点!
ここ数年、デジタルヘルスを活用したメンタル面へのアプローチが増加しています。
今回取り上げた「自動車事故、身体的暴行、性的暴行、重大な落下事故や大規模な災害などの心的外傷ストレスにさらされた後に睡眠障害、痛み、不安に苦しんでいる患者を検出して観察するためにウェアラブルを活用する研究」も、その一環と言えるでしょう。
医療は通常分業です。怪我の治療なら外科に行くことになりますので、医師は当然、怪我を治すことのプロということになります。必ずしもメンタル面までサポートができるスペシャリストばかりではないでしょう。
しかし、身体面に及ぼすことはメンタル面にも影響を与えるのが人間です。セットで考えなければ、本当の完治は得られないのかもしれません。
だからと言って、外科医にメンタルサポートまで求めることはキャパオーバーになりかねません。
そこで役立つのがデジタルヘルスなのではないかと考えたのが今回の研究です。
今回の研究は、記事にもあるように条件をかなり絞り込んでいますので、多くのケースで使えるものとはならないかもしれませんが、まずは絞り込んだところでしっかり成果を出すことが重要です。
今回は状態の観察までですので、今後は症状に合わせた治療支援も必要になるでしょう。
今回の研究から、デジタルヘルスにはまだまだ可能性があることが感じられました。
『mHeath Watch』編集 渡辺 武友
株式会社スポルツにて健康ビジネスにおけるマーケティングに関するコンサルティング、一般社団法人 社会的健康戦略研究所の理事として、ウェルビーイングの社会実装方法の研究を行う。またウェアラブル機器、健康ビジネスモデルに関する健康メディアでの発表や、ヘルスケアITなどで講演を行う。
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