『mHealth Watch』では、ここ最近で公開されたニュースから「注目ニュース」をピックアップし、独自の視点で解説していきます。
今回注目したニュースはこちら!
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“「会話へのAI利用」がもたらす影響”
ChatGPTやGPT-4など、大規模言語モデルの先進性を示すニュースが連日報じられている。しかし、この種の技術を日常生活に取り入れる社会的影響はまだ十分に理解されていない。米コーネル大学の研究グループは「会話にAIを用いることで生じる社会的コスト」について調査している。
Scientific Reportsに掲載された同研究では、2種の実験から、対話にAIを利用することのポジティブ/ネガティブな二面性を明らかにした。1つ目の実験では、大規模言語モデルが自動返信するプラットフォーム「スマートリプライ」を用い、219組の参加者には「全員がスマートリプライを使用」「2名のうち1名だけがスマートリプライを使用」「スマートリプライを使用しない」という3条件に割り振って政策課題について討論させた。結果、スマートリプライ使用で「コミュニケーション効率」「ポジティブな感情表現」「コミュニケーション相手からのポジティブな評価」が高まっていた。一方、「スマートリプライ利用をパートナーから疑われた参加者は、自力で返信していると思われた参加者より否定的な評価(協力的ではない・親和性が低い)を受ける傾向」にあった。
2つ目の実験では、「スマートリプライなし」「デフォルトのスマートリプライ」「ポジティブな感情トーンを持つスマートリプライ」「ネガティブな感情トーンのスマートリプライ」の4条件で政策課題の討論を行ったところ、ポジティブな感情トーンを持つスマートリプライの存在で、他条件よりポジティブな会話が増加することが明らかとなった。
著者のMalte Jung氏は「AIを使っているかどうかに関わらず、AIでの文章作成を相手から疑われるだけで、より否定的に評価される傾向には驚いた。これは人々がAIに対して抱く根強い疑念を示している」と語っている。
記事原文はこちら(『The Medical AI Times』2023年4月11日掲載)
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『mHealth Watch』の視点!
ChatGPTが話題となり、早くもヘルスケア関連での導入したサービスが登場してきています。他にもオンラインヘルスケアサービスに、チャットボット導入を検討したいとの話しもよく聞くようになりました。
オンラインでのサービス提供には、大いにAIを活用していただきたいと思います。ただし、使い所には注意が必要なのがヘルスケア領域です。
今回のニュースではテーマがヘルスケアではなく、政策課題とのことでしたが、実験結果としてはヘルスケア領域で起こる反応と、そう変わりないと感じました。
私も15年以上、ヘルスケアのオンラインサービスに携わってきましたが、どんなに優れたロジックを組んでも、利用者はシステム(機械)からのアドバイスを、一部の人を除いて許容できないと感じています。
受け入れるのは、健康行動に対して前向きでシステムから来るアドバイスにも抵抗のない方です。
とりあえずやってみようかと思っていたり、まずは試しでくらいの段階だと、システムから届くものは受けが良くない印象です。
健康行動が継続しにくい人は、いろいろ試すも「自分には合っていない」と感じることがあります。
だからこそ提供者としては、システム解析することで、その人にあったものをアドバイスしようと考えますが、利用者としては、バシッと適したものが届かないと違和感を感じる傾向があります。
それはシステム(AI含め)から提供されるということは、より正確なものが届くと思い込み(期待?)があるためではないでしょうか!?
これが人から提供されるものなら、微妙なズレがあっても許容しやすかったりします。その人の人柄だったり、その他の会話のニュアンスからうまく補正しているのではないでしょうか。つまり信頼関係があるかどうかで、許容の範囲が違うと思うのです。
機械には信頼感よりも正確性を求めてしまうのは仕方のないことでしょう。
ではヘルスケアにシステムは合わないのかと言うと、そんなことはないと思うのです。要は使いどころです。
ヘルスケアは正確さだけでは健康行動継続に繋がりません。どんな場面に機械的な表現がよいのか?チャットボットだと馴染むのかを、改めて考えてみてください。
『mHeath Watch』編集 渡辺 武友
株式会社スポルツにて健康ビジネスにおけるマーケティングに関するコンサルティング、一般社団法人 社会的健康戦略研究所の理事として、ウェルビーイングの社会実装方法の研究を行う。またウェアラブル機器、健康ビジネスモデルに関する健康メディアでの発表や、ヘルスケアITなどで講演を行う。
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