『mHealth Watch』では、ここ最近で公開されたニュースから「注目ニュース」をピックアップし、独自の視点で解説していきます
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“シンガポールで糖尿病とフットケア意識を高めるサービスを提供”
シンガポールの研究者らは、糖尿病患者に糖尿病性足潰瘍とセルフフットケアについて指導するモバイルアプリを導入した。
Tan Tock Seng病院(TTSH)とナショナル・ヘルスケア・グループの臨床医が協議して開発された『WellFeet』という名前のアプリは、英語、北京語、マレー語、タミル語など複数言語に対応したアニメーションを通じて、包括的な教育を患者に提供する。
また、患者の記録保存や日誌としての機能を有し、毎日の投薬や身体活動、食事摂取を把握する上で、ゲーム的要素を加えた。こうしたデータにより、医師は進捗状況を監視し、実行目標をカスタマイズすることができる。
さらに、患者用のチャットボットアシスタント機能を備えたこのアプリには、自己反省のためのプロンプトも用意されており、患者が自分の思考や感情について分析し、パターンや要因を見極めた上で、最終的に行動や考え方を改めるための前向きな行動を起こすことを支援する。
このアプリは、国内の5つの医療機関で約800人の患者と介護者が関与する研究プロジェクトで初めて試用され、フットケアに関する行動が調査された。また、別の研究では、TTSHの患者と介護者40組を対象にしてアプリをテストしたところ、使用開始から1か月後には、フットケアに関する行動や糖尿病セルフケアの習慣にポジティブな変化が見られた。
研究チームは現在、アプリに調整を加えることでAIおよび人間のヘルスコーチングを統合する可能性を追求し、「よりタイムリーでパーソナライズされたサポート」を提供しよう考えている。2024年半ばまでに無料アプリとして一般向けに公開される予定だ。また、同チームは保健省のOffice Healthcare Transformation(医療変革局)や投資家と協力して、テクノロジーの対象範囲を拡大するための支援を求めることも検討している。
記事原文はこちら(『mobihealthnews』2024年3月19日掲載)
※記事公開から日数が経過した原文へのリンクは、正常に遷移しない場合があります。ご了承ください。
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『mHealth Watch』の視点!
長年mobihealthnewsを見てきましたが、この1年での変化として、アジア圏のニュースが多く取り上げられるようになりました。
ここ1、2年でアジア圏でのデジタルヘルス活用が増加し、しかも、ただデジタルを使っただけでなく、先行する米国での課題解決への取り組みとして活用しているレベルのデジタルヘルスが登場してきていると言えます。
今回取り上げたシンガポールの取り組みも、患者の健康行動の継続に注力したものとなっています。
以前であれば、数値を計測し、どれだけ悪いかを指摘し、正しい健康行動を押し付けるようなものが多かったわけですが、それでは対象者は動かないことを実体験から知り、次の段階に着実に進んでいます。
調査から「フットケアに関する行動や糖尿病セルフケアの習慣にポジティブな変化」を見ていることからも、現在は対象者の行動継続に注力しているのがわかります。
日本でもこのようなレベルでのアプローチは見受けられますが、まだまだ主流とまでは言えない状況です。
このままだと後発のアジア各国に追い抜かれかねません。気を引き締めて、改めて「セルフケアで効果を出すために必要なことは何か?」を考え、挑んでいただきたいです。
『mHeath Watch』編集 渡辺 武友
株式会社スポルツにて健康ビジネスにおけるマーケティングに関するコンサルティング、一般社団法人 社会的健康戦略研究所の理事として、ウェルビーイングの社会実装方法の研究を行う。またウェアラブル機器、健康ビジネスモデルに関する健康メディアでの発表や、ヘルスケアITなどで講演を行う。
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