『mHealth Watch』では、ここ最近で公開されたニュースから「注目ニュース」をピックアップし、独自の視点で解説していきます。
今回注目したニュースはこちら!
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“集団の幸福感に相関する「組織活性度」を計測できる新ウエアラブルセンサを開発”
株式会社日立ハイテクノロジーズは、人間行動データを取得、解析し、組織生産性に強く相関する「組織活性度」を計測できる新ウエアラブルセンサを開発しました。本製品は、株式会社日立製作所が開発した、集団の幸福感を身体運動の特徴パターンから「ハピネス度」として定量化する技術を活用したものです。
幸福の向上は社会の最も重要な課題の一つであり、最近では、内閣府が「主観的幸福感」を中心とする国としての幸福度指標を検討しており、文部科学省が「ハピネス社会の実現」をめざす研究プログラムを推進しています。さらに、最近の研究では、人の幸福感は組織の生産性に大きく影響することが報告されています。しかし、これまで幸福感や組織の活力を定量化するには、自己申告に基づく質問紙(アンケート)に頼らざるを得ませんでした。このため、企業組織においては、経営施策や職場環境などが従業員の幸福感や活力にどのように影響しているか、リアルタイムに定量化し、客観的に評価することは困難でした。
日立ハイテクが開発した「組織活性度」測定機能搭載の新ウエアラブルセンサは、人間行動データを取得し、個人の活性度を演算後、組織で集計・平均することで、「組織活性度」の定量化を実現した製品です。「組織活性度」を定量化することで、業務改善や生産性向上などを支援することができます。これは、日立が考案した身体運動の特徴パターンから集団の幸福感を定量的に求める予測モデルを活用したことにより、実現したものです。
日立が考案した集団の幸福感を定量的に求める予測モデルは、ウエアラブルセンサで得られた大量の人間行動データの分析から、集団の幸福感と強い相関がある身体運動の特徴パターンを見出したもので、「ハピネス度」として定量化しました。さらに、定量化された幸福感は、その組織の生産性に強い相関があることを突き止めました。
日立ハイテクは、これら条件を用いて新ウエアラブルセンサを開発し、従来客観的な評価が困難であった企業の経営施策や職場環境の有効性を、効率的かつ客観的に評価することを可能としました。ユーザーは、本製品を活用したサービスを新たな経営支援ツールとして活用できます。
今後、日立ハイテクでは、これまでに展開している「ヒューマンビッグデータ/クラウドサービス」の新たなソリューションとして、本製品を活用したサービスをさまざまな分野へ提供していきます。 また、日立は本技術を活用し、幅広い事業分野で、顧客企業の業績向上や地域住民の幸福向上に向けた施策を支援していきます。
プレスリリースはこちら(株式会社日立ハイテクノロジーズ、2015年2月9日発表)
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『mHealth Watch』の視点!
今回の注目ニュースは、組織の活性度を計測できるウェアラブルセンサーに関してです。
これまで提供されてきた多くのウェラブル機器は、パーソナルユース、個人でのデータ管理および活用が中心でした。今回、日立ハイテクノロジーズ社が発表したウェラブルセンサーは、従業員個人のデータを活用して組織の活性度を測定するという新しいアプローチです。
これまでも従業員の健康は、職種や職場の環境も大きく影響しているため、個人へのアプローチもさることながら職場単位、組織単位でのアプローチが必要、と言われていました。今回のウェアラブルセンサーでは、従業員ひとり一人の行動データを組織で集計することで、「組織活性度」の定量化、見える化が可能になり、この「組織活性度」を活用して業務改善や生産性向上などにも活かすことができるということです。
また、今回のウェアラブルセンサーによる「組織活性度」は、集団の幸福感と強い相関がある身体運動の特徴パターンを見出したもので、「ハピネス度」として定量化したものが背景にあり、「ハピネス度」は身体活動の持続時間と相関があるようです。
現状のウェアラブル機器のサービスを見ていると、データの見える化までは提供できていますが、その先のソリューション、解決策は利用者側に委ねてしまっているような気がしています。
しかし、そもそもの話ですが、なんのためのウェアラブル機器なのか? なんのために装着するのか? という点に関してが明確になっていないことが、ソリューションまで提供できていないひとつの理由になっているように感じています。
世界的には拡大しているウェアラブル機器ですが、日本国内のヘルスケア系のウェアラブル機器は大きくブレイクしていないのが実情です。今後、日本でウェアラブル機器の拡大に向けた可能性として、今回のニュースのように組織や集団に向けた目的を明確にした取り組みや、医師、医療従事者による治療や保健指導向けなど、活用目的を明確にした展開や専門家の指導ツールなどBtoBtoCでの展開をどう設計できるか、という視点が必要になってくるような気がしています。
今回のニュースの組織の活性度を測るウェアラブル機器の展開は、BtoB向けの機器とソリューションの組み合わせとして今後注目していきたいと思います。
『mHeath Watch』編集委員 里見 将史
株式会社スポルツのディレクターとして、主に健康系ウェブサイト、コンテンツなどの企画・制作・運営を担当。また『Health Biz Watch Academy』では、「mHealth」のセミナー講師として解説。(一財)生涯学習開発財団認定コーチ。
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