『mHealth Watch』では、ここ最近で公開されたニュースから「注目ニュース」をピックアップし、独自の視点で解説していきます。
今回は、8月2~4日にかけて東京ビックサイトで開催された「ウェルネスフードジャパン」のセッションのなかから、「行動の継続にアプローチする『ヘルスコーチング』」の取材を行ないましたので紹介します。
============================================
“行動の継続にアプローチする『ヘルスコーチング』”
当セッションは、(株)スポルツの里見将史(mHealth Watchエディター)をモデレーターに、ヘルスケアオンラインサービスを提供する(株)エムティーアイから川端史紀氏、ネオス(株)から藤井早織氏、Noom Japan(株)から濱嵜有理氏の3名が登壇して行なわれた。
最初は里見より、健康行動における課題を解決する日米の成功事例には、人を中心に配置した人介在型のサービスモデルになっていること。リアルが絡まないサービスにはお金が払われにくいが、人が絡むことで解決していること。など、市場の現状紹介と継続させるサービスとして『ヘルスコーチング』の導入が進んでいること。『ヘルスコーチング』で達成できることや役割について解説された。アプローチする上で特に抑えておきたいポイントが以下の4つ。
『ヘルスコーチング』の具体的なアプローチポイント
・常に目的、目標、ゴール、達成イメージを意識させる
・目的、目標、ゴール、達成イメージのために具体的なアクションがあることを意識させる
・身体や意識の変化=小さな成功体験への気づき
・PDCAサイクルを回す
これらを踏まえて、サービス提供の形や専門家の役割などが紹介された。
引き続き、国内ですでに『ヘルスコーチング』を導入している3社の取組みがそれぞれ紹介された。
エムティーアイ『MY栄養コーチ』
エムティーアイの川端史紀氏からは、『MY栄養コーチ』がただの栄養指導ではなく、継続的な行動変容を促すためのコミュニケーションを軸としたコーチングサービスであることが特長である、と語られた。具体的には食事写真を見るだけでなく、体重、歩数、消費、睡眠などの身体情報も踏まえて、対象者にとって続きやすい行動にフォーカスしたコーチングを行なっている。ポイントは本音を引き出すカウンセリング。相手をよく理解し、正しい方法を強制するのではなく、対象者にもっとも合った方法を見つけていく。合っているかの基準は「無理なくワクワク取り組めるか」。以上のように各工程を明確化して取り組んでいる。
ネオス『Karada Managerオンライン』
ネオスの藤井早織氏からは、ひとりじゃないから続けられる、ヘルスコーチがファシリテートするラーニング型コミュニティーを『Karada Managerオンライン』にて提供していることが紹介された。ラーニング型コミュニティでは、ベストコンディションを目指す「食コンディショニング実践プログラム」、無理なく体幹からスタイルを改善する「女子の体幹プログラム・オンライン」、サブスリーを目指すランナーのための「平塚潤サブスリー塾」の3プログラムが提供されている。特長は、同じ目的を持った仲間と励まし合い、共に学ぶことで一人でも継続可能なやり方を見つけていけることである。
Noom Japan『Noom』
Noom Japanの濱嵜有理氏からは、Noomの行動変容プログラムをベースに、AIによる分析、専門コーチ(ライフスタイルコーチ)によるサポートが16週間プログラムとして提供される『Noom』について紹介された。ヘルシーな食習慣を身に付けるために「ボリュメトリクス法」を使って、食品を3色に分類して、適切なバランスになっているかを視覚的に確認しながら取り組めるものとなっている。昨年から企業向けにも提供され、12週間のプログラムでは75名中94%がダイエットに成功したことなどが紹介された。現在は、プログラム終了後のフォローアッププランの準備を始めている。
mHealth Watch取材(2016年8月2日)
============================================
『mHealth Watch』の視点
mHealthがムーブメント化するなか、オンラインサービスでの有料化が課題となってきました。システム的にレコメンドするだけでは、日本だけでなく、北米においても継続させるのはとても難しかったのです。
2014年あたりから注目され、実証実験で効果を出してきたのが「人の介入」です。デバイスとアプリの世界に、敢えて人が関わることで、新たな価値が生まれていったのです。特に継続率が高いと言われてきたのが『ヘルスコーチング』。北米圏では多くの企業が導入し、mHealth Watchでも都度紹介してきました。
日本でのmHealthへの本格導入が始まったのは、昨年2015年からと言ってよいでしょう。今回紹介した3サービスは、その代表的存在と言えます。まだユーザー数はインパクトある数字にまではなっていないようですが、『MY栄養コーチ』、『Noom』が軒並み大幅値上げをしていることからも、提供価値が評価されているからこその値上げと見ることができます。
今後どのように『ヘルスコーチング』における個性が磨かれていくのか、動向を見ていきたいと思います。
『mHeath Watch』編集 渡辺 武友
株式会社スポルツのクリエイティブディレクターとして、健康系プロダクト、アプリ、映像などの企画・制作ディレクションを手掛ける。「Health App Lab(ヘルスアプリ研究所)」所長として健康・医療アプリの研究発表を行う。またウェアラブル機器、ビジネスモデルの研究を行ない、健康メディアでの発表や、ITヘルスケア学会 モバイルヘルスシンポジウムで講演を行う。
Comments are closed.