『mHealth Watch』では、ここ最近で公開されたニュースから「注目ニュース」をピックアップし、独自の視点で解説していきます。
今回注目したニュースはこちら!
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“健康サポート薬局「ピノキオ薬局」で食事管理DXツールを活用した食生活改善アドバイスを開始”
―薬剤師による服薬指導と管理栄養士による栄養アドバイスを一度の来店で提供し、患者の健康寿命延伸をサポートー
食事・運動・体重管理アプリケーション「カロミル」の開発・提供をするライフログテクノロジーは、栃木県内に46店舗の調剤薬局を展開するピノキオ薬局にオンライン食事管理ツール『カロミルアドバイス』の提供を開始したことをお知らせします。
・地域密着の保険薬局としての役割
〇 服薬指導だけでなく食生活改善アドバイスも受けられる、「来店するだけで健康を目指せる薬局」に
ピノキオ薬局は栃木県内で46店舗の保険薬局を展開する、地域密着型の薬局です。医師の処方箋から薬剤の調剤を行う保険薬局として、1984年より地域に寄り添ってきました
人生100年時代を迎え「健康寿命の延伸」を国が掲げる中、保険薬局として薬剤師による服薬指導だけでなく、管理栄養士による食生活改善アドバイスを行う事で、健康を目指す患者のサポートを開始しています。
一度の来店で、薬剤師による服薬指導と、管理栄養士による食生活改善アドバイスを受けられるような仕組みをつくり、疾患の治療だけでなく予防・未病という点でも、来店する方に寄り添った取り組みを行っています。
その1つの取り組みとして、「糖尿病スペシャリスト」という社内認定制度を設け、所定の研修会に参加し社内認定を受けた薬剤師・管理栄養士が協力し合い、糖尿病患者の食生活改善アドバイスをするサービスを開始しました。血糖値のコントロールにおいて食事管理は非常に重要です。薬のプロと食事(栄養)のプロがそれぞれ情報共有をしながら、健康を目指す患者をサポートしています。
・食事指導の課題解決をDXツールがサポート
〇 脱紙ベースのやりとり!患者からのデジタル化の要望の声も多数
食生活改善アドバイスでは、前段階として「食事内容のヒアリング」が必要です。従来の方法では、患者に紙ベースで食事内容を記録してきてもらい、その記録内容を基に管理栄養士が細かくヒアリングをし、食生活に関するアドバイスを実施していました。
しかし、記録が続かない、食事内容を覚えていない、といった人や、記録方法では食べた食事の量を細かく記録する人もいれば、主菜のみで副菜の記載は省いている大まかな記録となる人もいて、的確なアドバイスを実施する上での課題となっていました。
〇 アプリとウェブツールの活用で、業務の効率化を実現
一人当たりにかかる栄養指導は平均3時間となり、指導者側への負担は非常に大きく、具体的な指導に時間を割くことは難しくなってしまいます。
指導対象者(患者)のカロミルと連携した『カロミルアドバイス』では、指導対象者(患者)がカロミルに記録した食事内容からAIが自動で栄養素を算出し、目標値に対する過不足栄養素がすでに揃っている状態で、食事指導に入ることが可能です。細かい食事内容のヒアリングや栄養価計算の必要はなくなるため、食事指導に入る前にかかる業務時間を99%削減することができます。
〇 『カロミルアドバイス』について
指導対象者(患者)の「カロミル」アプリと連携し、食事や栄養指導をすべてオンライン上で完結できる、指導者向けのウェブツールです。指導対象者(患者)の食事データの記録・蓄積が自動化されるだけでなく、AIが食事内容を自動で解析・栄養計算し、指導者の栄養計算など食事指導にかかる手間が大幅に削減されます。
プレスリリースはこちら(ライフログテクノロジー株式会社、2021年6月10日掲載)
※記事公開から日数が経過した原文へのリンクは、正常に遷移しない場合があります。ご了承ください。
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『mHealth Watch』の視点!
今回注目するのは、健康サポート薬局での服薬指導と食事指導をワンストップで提供できるように、食事指導の効率化に向けてアプリと指導ツールを活用したというニュースです。
健康サポート薬局は、かかりつけ薬剤師・薬局の機能に加えて、食事や栄養に関することまで気軽に相談できる薬局として、本来は地域の健康拠点的な役割を担っています。
そのため、薬としての専門家である薬剤師による服薬指導と食事や栄養に関しては、専門家である管理栄養士による食事指導とそれぞれの専門家の存在が必要になります。
特に食事や栄養の指導に関しては、患者さんの疾病とも関係しており、患者さんの食生活の把握が必要であるため、実際の食事や栄養指導の現場では、患者さんの情報の収集、ヒアリングに多くの時間が費やされているのが現実でした。
今回の健康サポート薬局での食事、栄養指導では、患者さんにアプリを使ってもらって日々の食事を記録してもらうため、情報収集の時間が大幅にカットできます。また、アプリからの情報と連動した指導ツールを管理栄養士側が使うため、指導者側での栄養計算などの食事指導にかかる手間も大幅に削減できるようです。
このように、「人」が担っている役割の中で効率化を図るために、既存のアプリやツールを仕組みとして活用できれば、「人」の負荷が削減できるため、コストの低減はもちろん対応可能な人数も大幅に拡大可能になるためビジネス面でも規模の拡大にもつながっていきます。
しかし、今回のように既存のアプリや指導ツールを業務の効率化に活用する上では、注意しなければいけないポイントがあります。
それは既存のアプリを活用したからといって、対象者がアプリを使ってくれる、使い続けてくれるはずと考えてはいけいということです。
アプリを使ってくれる、アプリを使い続けてくれる人達は、ある程度目的意識をもった、ある意味健康意識が高い人達です。
多くの人は、アプリを使ってみること、使い続けることには、ある程度距離感が存在しているのが事実です。
そのため、アプリを使うこと、使い続けることが前提であったり、そもそもアプリを使ってくれないとサービス提供が行えない、サービスがスタートしないような組みたてでは、本来の業務の効率化に結びつくことすらできないのです。
提供するサービスの中で、既存のアプリやツールを活用して仕組み化することで効率化が可能なケースも多いのは事実ですが、まずは対象者、利用者を見据えた上でアプリやツールを活用していくことがまずは重要です。安易な考えの効率化だけで活用するのだけはご注意ください。
『mHealth Watch』編集委員 里見 将史
株式会社スポルツのディレクターとして、主に健康系ウェブサイト、コンテンツなどの企画・制作・運営を担当。また『Health Biz Watch Academy』では、「mHealth」のセミナー講師として解説。(一財)生涯学習開発財団認定コーチ。
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