『mHealth Watch』では、ここ最近で公開されたニュースから「注目ニュース」をピックアップし、独自の視点で解説していきます。
今回注目したニュースはこちら!
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“NECと九州大学、感情推移や行動履歴などの日常生活データから健康行動を促すヘルスケアサービスの実証実験を開始”
~データに基づいた食事・運動メニューのレコメンドや健康アドバイスを実施~
日本電気(以下NEC)と九州大学は、感情推移や行動履歴などの日常生活データに基づきパーソナライズされたヘルスケアサービスを提供して健康行動を促す実証実験を本年2月9日から実施します。
本実証は、データを利活用して社会課題の解決を目指す「データドリブン型社会」の実現に向けNECと九州大学が2020年10月に締結した連携協定(注1)における第一弾の取り組みです。九州大学伊都キャンパスに通学・通勤する学生・教職員を対象に、日常生活データを活用したパーソナライズドサービスの受容性・有効性を検証します。
超高齢社会に突入した日本には、後期高齢者の割合が増え続けることに伴う社会保障費の急増、医療や介護に関わる人材の不足など、深刻な課題が数多く存在しています。とりわけ社会保障費の適正化には健康寿命の延伸が肝要であり、予防医療や健康増進など人々の健康な暮らしを持続するための取り組みが求められています。
本実証では、心拍変動データにより感情を可視化する「NEC 感情分析ソリューション」(注2)を活用した感情推移データや、本人の申告に基づく食事、睡眠時間、活動内容などの行動履歴データをウェアラブルデバイスやスマートフォンを通じて収集します。収集した日常生活データに基づき、医師による一人一人に合わせた健康アドバイスや、九州大学伊都キャンパスのウエストゾーンに1台設置予定のカメラとデジタルサイネージを活用して健康行動につながる最適な食事や運動メニューをレコメンドするなど、パーソナライズされたサービスを提供します。本実証は、九州大学キャンパスライフ・健康支援センター眞﨑義憲准教授のアドバイスのもと実施します。
(注1)NECと九州大学、「データドリブン型社会」の実現に向けて連携協定を締結
https://jpn.nec.com/press/202011/20201105_02.html
(注2)「NEC 感情分析ソリューション」
ウェアラブルデバイスを用いて生体情報を取得し、実証協力者の感情推移をグループ単位、個人単位でグラフィカルに表示するクラウドサービスです。Webブラウザで感情分析クラウドサービスに接続するだけで、現在の感情や1日の感情履歴などを簡単に分析することが可能です。
https://jpn.nec.com/embedded/products/emotion/index.html
プレスリリースはこちら(日本電気株式会社 2022年1月28日掲載)
※記事公開から日数が経過した原文へのリンクは、正常に遷移しない場合があります。ご了承ください。
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『mHealth Watch』の視点!
今回注目するのは、NECと九州大学が開始する日常生活データから健康行動を促すヘルスケアサービスの実証実験に関するニュースです。
特に、注目したいのがNECが保有する感情を可視化する「NEC 感情分析ソリューション」を活用した感情推移データと日常の行動データと身体のデータを組み合わせて、パーソナライズされて情報を提供する点です。
ヘルスケアサービスの提供では、「パーソナライズ」への対応が外せない要素になってきています。「パーソナライズ」に対応したサービスで欠かせないのが、パーソナライズする上で必要となる個人ごとの情報やデータです。
今回の実証実験でパーソナライズ化する際の情報源やデータとしては、「感情」と「体温」などの身体のデータ、そして「睡眠」、「運動」、「食事」などの生活習慣のデータ、そして「スケジュール」などの行動のデータです。
これらの個人のデータを組みあわせて、医師による一人一人に合わせた健康アドバイスや健康行動につながる最適な食事や運動メニューをパーソナライズに提供します。
医師による健康アドバイスや最適な食事や運動メニューの提案などの具体的な内容は今回のニュースではわかりませんが、パーソナライズされた情報提供、レコメンド内容は、受け取る側の納得感がポイントになってきます。
提供された内容が、個人ごとに向けた内容になっていることはもちろんなのですが、パーソナライズ化に必要な情報(今回のニュースで言うと、「感情」や「体温」そして「睡眠」、「運動」、「食事」「スケジュール」などの生活行動データなど)を記録したり、入力したりする負荷や手間に対して、提供されたアドバイスなどの情報が受け取った側として満足いく内容なのかどうかが大きなポイントになってきます。
簡単にいうと、せっかく記録、入力したのに「この程度のパーソナライズ化された情報提供しかないのか!?」と思われてしまうと、記録、入力するモチベーションが下がって継続されなくなってしまいます。
もともと、ユーザーからの記録、入力を前提にしたパーソナライズ提案だとすると、記録、入力が無い状況では、せっかくの情報提供やアドバイス、レコメンドが活かせなくなってしまうのです。
パーソナライズ化、特に対象者の行動やデータをもとにした情報提供やレコメンドでは、
対象者の記録や入力が前提になっているケースがあったりします。
対象者の記録や入力が前提だと、せっかくのパーソナライズ化された情報提供やレコメンドが機能しないケースが発生するので、パーソナライズ化された情報を提供する場合には、情報源となるデータの収集の面にも気を配る必要が出てきます。
今回の実証実験のニュースが対象者の記録や入力が前提になっているわけではありませんが、パーソナライズに対応した情報提供を行う際には、対象者との継続的なリレーションを保つこと、そして対象者の情報を負荷なく簡便に、常に収集できる仕組みも検討しておく必要があるのです。
『mHealth Watch』編集委員 里見 将史
株式会社スポルツのディレクターとして、主に健康系ウェブサイト、コンテンツなどの企画・制作・運営を担当。また『Health Biz Watch Academy』では、「mHealth」のセミナー講師として解説。(一財)生涯学習開発財団認定コーチ。
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