『mHealth Watch』では、ここ最近で公開されたニュースから「注目ニュース」をピックアップし、独自の視点で解説していきます。
今回注目したニュースはこちら!
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“スマートフォンアプリを活用した特定保健指導の効果検証を実施”
~朝晩の体重測定によって、3ヶ月で平均体重2kgの減量効果を確認~
オムロン ヘルスケアは、独立行政法人国立病院機構京都医療センター臨床研究センター予防医学研究室と、当社の特定保健指導向けスマートフォンアプリ『けんぽアプリ』を活用し、特定保健指導プログラムが減量に及ぼす影響に関するランダム化比較試験を実施しました。
その結果、『けんぽアプリ』を活用した特定保健指導は、活用しない指導に比べ減量効果が高いことを確認しました。さらに、『けんぽアプリ』を利用している健康保険組合員の測定データを用いて体重の測定頻度と測定継続率および減量効果に関する分析を行いました。その結果、測定頻度が高い人ほど測定継続率と減量効果が高いことがわかりました。
特定保健指導の実施率は2009年度から2019年度の10年間で、12%から23%へ向上しました。しかし、国の目標である45%には届いていません*1。特定保健指導を実施する時の課題として、生活習慣の聞き取りや行動目標の設定に手間をとられることや患者が減量目標を決められないことなどが挙げられています。今後の実施率を向上させるために、手順の簡素化による効率的かつ効果的な特定保健指導方法の開発が求められています。
当社は、『けんぽアプリ』等のスマートフォンアプリをはじめ、誰もが簡単に正しく測れる血圧計や体重体組成計などのデバイスを提供し、効果的な特定保健指導の実現に貢献していきます。個人が行う健康管理に加えて、企業が行うコーポレートウェルネスの取り組みへの支援を通じて、脳心血管疾患の発症ゼロ(ゼロイベント)の実現を目指します。
*1厚生労働省:2019年度 特定健康診査・特定保健指導の実施状況から
『けんぽアプリ』を用いた特定保健指導プログラムが減量に及ぼす影響の試験結果
京都医療センターと当社が、特定保健指導の対象条件に該当する40〜60歳男女を、『けんぽアプリ』を利用したグループと利用しないグループにランダムに振り分け、特定保健指導プログラムが減量に及ぼす影響を確認しました。その結果、アプリを利用した特定保健指導*2を受けたグループの3ヶ月後の減少効果は平均体重で2.0kgとなり、利用していないグループの減量効果は0.8kgにとどまりました。
*2対象者は生活習慣、減量目標の設定、行動目標の設定を事前にアプリへ入力する。医師・保健師は減量への動機づけや成功にむけたアドバイスの提供などの面談を実施した。
『けんぽアプリ』を利用している健康保険組合員の測定データ解析および分析結果
当社が、『けんぽアプリ』を利用している3つの健康保険組合の特定保健指導対象となる組合員167名のデータを解析し、体重の測定頻度と測定継続率および減量効果を確認しました。その結果、測定頻度の多い人の方が少ない人に比べて減量効果が大きいことがわかりました。
詳細は次の通りです。
1. 1日の測定回数および1週間の測定回数が多い人の方が少ない人に比べて減量効果が大きい
朝晩の体重測定を週6日以上継続した人の6ヶ月後の減量効果は2.6kg。一方で、1日1回の体重測定を週6日以上行った人の減量効果は1.7kg。また、朝晩の体重測定を行っていても週3日未満の人の減量効果は0.8kgにとどまりました。
2. 試験開始から4週間の測定頻度が高い人ほど、測定継続率も高い
試験開始から4週間に朝晩の体重測定を週6日以上行っている人は、6ヶ月後の測定継続率で約90%以上を維持できていました。同様に、朝晩の体重測定を週3日以上6日未満行っている人は6ヶ月後の測定継続率は約55%まで低下。また、最初の4週間で体重測定が1日1回かつ週3日未満の人の6ヶ月後の測定継続率は約6%まで低下。減量開始期間に測定頻度が多い人はその後の測定継続率も高いことがわかりました。
プレスリリースはこちら(オムロン ヘルスケア株式会社2022年8月24日掲載)
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『mHealth Watch』の視点!
今回注目するのは、朝晩の体重測定によって、3ヶ月で平均体重2kgの減量効果を確認したというニュースです。
減量、ダイエットにおいて、体重計測は基本中の基本の取り組みです。
しかし、この体重計測自体が継続して計測できない、習慣化できないという声をよく耳にしますし、特に減量、ダイエットでリバウンドを繰り返す人の中には、気づいたら〇〇キロ太ってたという意見を聞くように、体重計測が習慣化していない状況が肥満の背景にあるのは事実です。
このような状況からみれば、今回のニュースにあるように体重計測の頻度が高いことが減量に効果的なことは、驚く結果ではないかと思うのですが、では、なぜ計測頻度が減量効果につながっているのかという部分について、私は特に注目しています。
というのも、そもそも体重計測自体がダイエットに直接つながっている行動、アプローチではないからです。
では、体重計測の頻度が高いことが、なぜ減量効果につながるのかというと、これは私の推測にはなりますが、やはり計測という現状を確認することで、計測する前の行動の振り返りや計測した後の行動の改善への意識が働き、結果的に減量に向けた具体的な行動、取り組みにつながっていくのだと思うのです。
おそらく、体重計測のタイミングによって小さなPDCAのサイクルが回っているのだと思います。
この小さなPDCAのサイクルを1日の1回の体重計測では1サイクル、そして朝晩の体重計測では1日2回のPDCAのサイクルが回ることになるので、やはり1日2回のPDCAを回した方が、軌道修正のための行動が細かくできるということなのだと思います。
計測すること、記録することが効果的なのはだれもが理解していることなのですが、計測、記録すること自体が継続できないのも事実です。
その背景には、計測する、記録することの意味だったり、どのように活用するのかが理解できていない、使いこなせていないということがあるのだと思います。
やはり、計測や記録のサービスを提供する際には、その計測や記録の意味、効果的な使い方を含めたサポートの必要性を感じています。
計測、記録の機能だけ提供しても、成果には導けないのは、このあたりが大きく関係しているのではないかと、今回のニュースをみてあらためて認識しました。
『mHealth Watch』編集委員 里見 将史
株式会社スポルツのディレクターとして、主に健康系ウェブサイト、コンテンツなどの企画・制作・運営を担当。また『Health Biz Watch Academy』では、「mHealth」のセミナー講師として解説。(一財)生涯学習開発財団認定コーチ。
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