『mHealth Watch』では、ここ最近で公開されたニュースから「注目ニュース」をピックアップし、独自の視点で解説していきます。
今回注目したニュースはこちら!
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“研究:ダイエットの成否を決定する脳内神経機構を解明。摂食中枢神経シナプスの不可逆変化による食欲・体重リバウンド”
岐阜大学医学系研究科客員教授・関西電力医学研究所統合生理学研究センター長の矢田俊彦氏らのグループは、自治医科大学所属時(2018年3月まで)から継続した研究において、食事制限(ダイエット)後に体重リバウンドを起こすかどうかを決定する脳視床下部の神経機構を発見しました。
本研究では、食事制限したマウスから取り出した脳スライスで神経細胞活動を測定する実験で、24時間の100%食事制限は、視床下部ニューロペプチドY(NPY)のY1受容体を介した作用により、室傍核 1)OXT神経への興奮性入力(興奮性シナプス後電流(EPSC) 2))が抑制されました。24時間の食事制限の後、自由摂食条件にすると、このシナプス電流の抑制および1日摂食量の増加が3日間継続し、続いて、晩発性(自由摂食後7日以降)の摂食量と体重の増加(リバウンド)を起こしました。一方、24時間の50%食事制限の後2日間は同様の効果を示したが程度は小さく、その後は持続的な摂食量と体重の減少を示しました。
100%と50%の食事制限後1日目のデータをまとめて解析すると、EPSC抑制-摂食量増加の間の関係は飽和曲線を取り、不可逆的な変化(ヒステリシス 3))が示され、これがリバウンドの原因と考えられます。ヒステリシスを起こさない適切な強度の食事制限を用いることが、リバウンドを起こさないダイエットの鍵であることを見出しました。
本研究で、ダイエット後に摂食量増加をもたらす脳神経シナプス機構を解明し、さらに、強すぎるダイエットはOXT神経シナプスを不可逆的に変化させ、摂食・体重リバウンドを起こすことを明らかにしました。食事制限(ダイエット)の強度を適正域に設定し、シナプス変化を可逆的に作動させることにより、体重リバウンドを起こさないダイエットの成功につながり、肥満症の予防・治療のための優れた食事療法への応用が期待されます。
プレスリリースはこちら(国立大学法人東海国立大学機構 岐阜大学 2022年10月19日掲載)
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『mHealth Watch』の視点!
今回注目するのは、ダイエットの食事制限の強度が、その後の体重のリバウンドに関係しているという研究結果のニュースです。
ヘルスケアサービスはもちろん生活習慣病の予防、改善でも、減量、ダイエットのアプローチが絡んでくるため、減量、ダイエットは健康の取り組みの入口とも言え、ヘルスケアサービスでも中心的なアプローチとして位置付けられています。
また、この減量、ダイエットでは、今回のニュースのテーマでもある「リバウンド」してしまうケースが多いため、減量、ダイエットのアプローチは衰退することなく、様々な新しいアプローチやサービスが出ては消え、出ては消えを繰り返している状況です。
今回のニュースの研究結果は、ダイエットにおける「リバウンド」について、食事制限の強度が大きく関係していることを解明してくれています。
たしかに、食事制限の強度が高かければ高いほど、効果はすぐに表れますが、その分リバウンドする可能性が高いことは、なんとなく理解していましたが、今回の研究による裏付けによって、より説得力が増した印象です。
ダイエットをする人は、早く効果を得たいという意識が働きます。それと同時に、なるべくであれば「楽に」「簡単に」という意識も働きます。
この「早く効果を得たい」と「楽に」「簡単に」という同時に二つのことでダイエットするとなると、やはりプチ断食や1食置き換えなどのダイエット方法や、〇〇だけダイエットなどといった、ある意味偏った食事制限になりがちです。
今回の調査結果では、100%の食事制限と50%の食事制限では、50%の食事制限であればリバウンドを防げるということ。
100%と50%の食事制限が本来どの程度なのかはわかりませんが、やはり無理な食事制限は、確実にリバウンドするということなのだと思います。
健康に向けた減量、ダイエットでは、一時的な成果ではなく、減量、ダイエットをした状態をキープする、維持することが本来の成功なのです。
無理な食事制限でダイエットでリバウンドを繰り返すことは、逆に痩せにくい、太りやすい身体になっていく可能性もあります。
健康に向けた、減量、ダイエットでは、減量、ダイエットをした状態をキープし維持することを目標に、「早く効果を得たい」とか「楽に」「簡単に」ということよりも、取り組み自体も長く、継続できるような、取り組みを選択し実行することが重要です。
今回の岐阜大学の研究結果から、減量、ダイエットでは、無理な食事制限がリバウンドにつながる裏付けを示してくれています。減量、ダイエットの取り組みを提供する際の、エビデンス、裏付けの情報として活用可能な情報だとあらためて感じました。
『mHealth Watch』編集委員 里見 将史
株式会社スポルツのディレクターとして、主に健康系ウェブサイト、コンテンツなどの企画・制作・運営を担当。また『Health Biz Watch Academy』では、「mHealth」のセミナー講師として解説。(一財)生涯学習開発財団認定コーチ。
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