『mHealth Watch』では、ここ最近で公開されたニュースから「注目ニュース」をピックアップし、独自の視点で解説していきます。
今回注目したニュースはこちら!
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“ウェアラブルデバイスでふらつきを測定:日々の体調変化の見える化による医療・ヘルスケア”
北里大学医学部の藤岡正人教授(分子遺伝学、耳鼻咽喉科・頭頸部外科)、慶應義塾大学医学部の山野邉義晴(耳鼻咽喉科学、大学院医学研究科博士課程)らの研究グループは、加速度センサを内蔵したイヤホン型ウェアラブルデバイスで頭部運動を追跡するシステムを考案し、その基礎研究を行いました。
メニエール病や更年期障害、起立性低血圧など、変動するふらつきやめまいを引き起こす病気は多岐にわたりますが、その多くは日常生活で生じるものです。本成果では、今まで医療機関でしか検査できなかった平衡機能を病院外や自宅で計測することで、日々のふらつき症状の変化を定量的に評価できる可能性が示されました。この成果を活用することで、平衡機能障害を呈する疾患の診断や経過観察に役立つとともに、日常生活に隠れる“体調”の変動をユーザーが自ら理解する、いわゆる“ヘルスケア”領域において、本システムが幅広く役立つものと期待されます。この研究成果は、2022年10月11日に、Journal of Medical Systemsに掲載されました。
今後は、遠隔医療・診療やヘルスケア領域での社会実装を目指して臨床応用研究を行うと共に、変動性内耳障害(難聴・めまい)に対する臨床試験・治験でのめまい症状の評価に活用してまいります。
プレスリリースはこちら(学校法人北里研究所 2022年11月16日掲載)
※記事公開から日数が経過した原文へのリンクは、正常に遷移しない場合があります。ご了承ください。
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『mHealth Watch』の視点!
今回注目するのは、ウェアラブルデバイスによるふらつきを測定した基礎研究に関してのニュースです。
医療の現場では、医療機関でないと測定できないことが数多くありますが、その測定項目、測定内容によっては、医療の現場だけではなく、日常生活の中での計測、測定データがあると、より詳しく診断に役立てるケースもあります。
例えば、血圧のデータも医療機関で測定するデータにプラスして、自宅での日々の測定データがあるかないかで、医師の診断、治療に役立てる情報の量も大きく変わってきます。
また、日常生活の中での計測、測定データは、より普段の日常での身体の状況がデータに反映しているため、医療機関での測定よりも、より対象者の日常、生活が映し出されているのです。
このように、自宅での計測、測定データが診断、治療に役立てられる範囲が少しずつ増えてきていますが、自宅での計測、測定に用いる機器の精度については、医療機器と同程度である必要があります。
そのため、ウェアラブルの機器のデータがそのまま診断、治療に活かせるレベルかというと、そんな簡単なことでないのです。
やはり、医療の現場で診断、治療に活かせるレベルの計測、測定データとして成立させるためには、今回のニュースのような基礎研究のステップから、臨床応用研究や臨床試験・治験など、多くのステップがあったりします。
しかし、最近のウェアラブル機器では、いろいろなセンサーが組み込まれており、活用次第では、これまの活用範囲を飛び越えたデータ測定やデータの活用の可能性もあったりします。
今回のニュースでも、加速度センサを内蔵したイヤホン型ウェアラブルデバイスで頭部運動を追跡するシステムを考案したとのことです。
医療現場からの視点、アプローチだけではなく、健康、予防、スポーツなど、様々な分野と連携することで、これまでとまったく異なるセンサーの活用や計測、データの活用の可能性が見えてくるのではないかと、今回のニュースをみて、あらためて感じました。
医療、健康、予防、スポーツなどの領域を飛び越えて連携がスムーズに行える場や人の存在が、これからますます必要になってくるような気がしています。
『mHealth Watch』編集委員 里見 将史
株式会社スポルツのディレクターとして、主に健康系ウェブサイト、コンテンツなどの企画・制作・運営を担当。また『Health Biz Watch Academy』では、「mHealth」のセミナー講師として解説。(一財)生涯学習開発財団認定コーチ。
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