『mHealth Watch』では、ここ最近で公開されたニュースから「注目ニュース」をピックアップし、独自の視点で解説していきます。
今回注目したニュースはこちら!
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ダイエットやトレーニングからリハビリまで
“自分にぴったりの運動量が一目で分かる世界初の画期的な技術をご紹介”
ダイエットのためにウォーキングを始めたいけど、どのくらい歩けば効果的?マラソン大会に参加したいけど、もっと走る量を増やしたほうがいいのかな?そんな悩みに応えるのが、ファンケルが開発した新技術。自分の体力を測定し、それに見合った運動量を設定できる画期的な技術です。
“自分にとっての「適度な運動」、知っていますか?”
コロナ禍でテレワークの導入も進んだ今日この頃――。運動不足を感じる方も多いのではないでしょうか?健康を保つためには、適度な運動が欠かせません。では、「適度な運動」とは一体どの程度の運動なのでしょうか?実は、どれくらいの運動が適度かは人によって異なります。なぜなら、体力のレベルには個人差があるからです。つまり、適度な運動を設定するには、自分の「体力レベル」を知る必要があるということです。
“ファンケルの新技術を活用し、「適度な運動」を科学的に設定”
では、自分の「体力レベル」を知るためにはどうすればよいでしょうか?それを可能にするのが、ファンケルが開発した「効果的な運動量を可視化する」技術です。この技術を搭載したデバイス・アプリを使用すれば、自分の体力レベルがどの程度なのかを測ることができます。さらに、測定した体力レベルに応じて「健康づくりにはこのくらい」、「スポーツの競技力を上げるにはこのくらい」と、適切な運動量を科学的な根拠に基づいて設定することも可能です。
“従来の技術は、費用面で大きな問題が……”
体力レベルを測る技術はほかにも存在しており、一部のプロスポーツチームなどで活用されるほど高い精度を有しています。ただし、測定には特殊な機械が必要で、機械の価格は1,000万円以上。1回の測定にも2万円以上かかります。また、得られた測定結果は専門の医師や理学療法士による分析が必要で、個人が気軽に利用できるものではありません。安価に簡易測定ができるデバイスもありますが、精度が低いという問題を抱えています。
“ファンケルの新技術で、正確に・どこでも・誰でも・安価に測定が可能に!”
それに対して、現在ファンケルが開発を進めているデバイスとアプリを使えば、高精度な従来の測定法と同等の精度で測定できると同時に、価格は従来の100~200分の1程度。携帯可能で、いつでもどこでも測定ができます。また、データ解析もワンクリックで簡単に行うことができ、個人でも気軽に利用することが可能です。
“従来の技術は「酸素を必要とするようになるポイント」から体力レベルを測定”
「酸素が不足するようになるポイント」を測ることで、測定を簡略化従来の測定法は「呼気ガス分析法」と呼ばれ、「無酸素性作業閾値(むさんそせいさぎょういきち、AT)」から体力レベルを測るという仕組みになっています。激しい運動をすると、呼吸が荒くなりますが、この「呼吸が荒くなるポイント」、すなわち「酸素を必要とするようになるポイント」がATです。どの程度の運動で酸素を必要とするかは個人の体力レベルによって異なるため、それを特定することで、体力レベルを測るという技術が「呼気ガス分析法」です。
“「酸素が不足するようになるポイント」を測ることで、測定を簡略化”
それに対して、今回開発した「酸素飽和度法」は「酸素飽和度性作業閾値(ST)」、つまり「酸素が不足するようになるポイント」から体力レベルを導く測定法です。STはパルスオキシメータを使って測定できるため、AT測定のように高額な機械を使う必要がありません。また、データを分析するための独自の計算式(S-slope法)を開発したことで、誰でも簡単に「適度な運動」を判定できるようになりました※。
※本技術は特許を取得しています(特許第6990333号、7256328号)。
プレスリリースはこちら(株式会社ファンケル 2023年6月16日掲載)
※記事公開から日数が経過した原文へのリンクは、正常に遷移しない場合があります。ご了承ください。
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『mHealth Watch』の視点!
今回注目するのは、ファンケルが開発した自分にぴったりの運動量が一目でわかる世界初の技術に関するニュースです。
失礼ながら、このニュースのタイトルを見た時には、運動レベルを測定し、その結果から推奨の運動とファンケルならではのサプリメントを提案する仕組みかと思ってしまいました。
しかし、記事の内容を読んだところ、もっとしっかりした測定技術とこの技術をプロスポーツのトレーニングへの応用、そして医療領域では運動療法への導入を視野に入れ、現在臨床試験などを重ねている段階とのことです。
医療領域における運動療法への導入では、心臓疾患の患者さんに向けたリハビリテーションの運動処方の際に、大掛かりな測定が必要なく、簡易に患者さんのレベルが測定可能になり、患者さんに応じた運動処方提示可能になるようです。
これまで体力レベルを測るには、「どの程度の運動で酸素を必要とするか」を測定するのに対して、今回の技術では「酸素が不足するようになるポイント」を測ることで、測定が簡略化されました。
しかし、この「酸素を必要とするか」ではなく「「酸素が不足するか」を測定し、その結果から運動レベルを判断するには、これまでの発想と逆の観点や機器はもちろん分析、解析のためのロジックが新たに必要になってきます。
そして、高い専門知識がなくても判断した体力レベルから誰でも簡単に「適度な運動」を提示できるようにするためには、誰もが安全に使いこなせるアプリはもちろん、運用面での配慮、検討も必要だと思います。
しかし、これまで大掛かりな機器や測定、そして高い専門知識が必要だったことも、今回のニュースのように発想の転換によって、簡易に測定が可能になり、そして高い専門知識も必要としないアプリによって自動的に表示されるということも、まだまだ医療、ヘルスケアの領域では存在しているのではと、今回のニュースを見て感じました。
現状の測定、データの活用についても、まだまだ別の視点、発想によって、新たなアプローチが隠れている可能があることをあらためて考えさせられたニュースでした。参考にしてみてください。
『mHealth Watch』編集委員 里見 将史
株式会社スポルツのディレクターとして、主に健康系ウェブサイト、コンテンツなどの企画・制作・運営を担当。また『Health Biz Watch Academy』では、「mHealth」のセミナー講師として解説。(一財)生涯学習開発財団認定コーチ。
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