『mHealth Watch』では、ここ最近で公開されたニュースから「注目ニュース」をピックアップし、独自の視点で解説していきます。
今回注目したニュースはこちら!
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“脳の健康チェックplus」の有償トライアルを開始 ”
~“認知症になる一歩手前の状態”を6分間の電話で確認~
NTTコミュニケーションズは、「認知症で不安になる本人・家族・企業が少なくなる社会へ」をコンセプトに掲げ、AIにより早期に認知機能の低下状態を確認できる「脳の健康チェックplus」の有償トライアルを、世界アルツハイマーデーである2023年9月21日より開始します。
「脳の健康チェックplus」は今後法人向けサービスとして展開予定ですが、今回は有償トライアルとして個人の方にもご利用いただけるよう専用の番号をご用意します。
「脳の健康チェックplus」はナビダイヤルでご提供します。ご利用には通話料がかかりますのでご注意ください。
1.背景
高齢化が急速に進むなか、2025年には高齢者の5人に1人、国民の17人に1人が認知症になると予測されており、その予防や発症後のケアなどへの意識が高まっています。
認知症には進行段階があり、認知症の予備群として軽度認知障害(MCI:Mild Cognitive Impairment)があります。MCIは「認知機能に関して低下を感じている、同じ年代の人と比べて認知レベルが低下している、しかし日常生活を基本的には正常に送ることが出来る」という状態を指し、日本には400万人ほどいるといわれています。
一方で、MCIから認知症に移行するのは1年で約5~15%とされており、適切な予防策を講じることで約16~41%の人は正常レベルに回復することがわかっています。そのため、MCIの状態を早期に発見し適切な対応や行動変容を促すことが重要です。
NTT Comは20秒程度の通話でAIが認知機能の低下を確認するサービス「脳の健康チェックフリーダイヤル」を2022年9月よりトライアル提供しましたが、このたび、より早期かつ詳細に認知機能の低下状態を確認できる新たなサービス「脳の健康チェックplus」の有償トライアルを開始します。
2.「脳の健康チェックplus」の概要について
「脳の健康チェックplus」はNTT Comと日本テクトシステムズで共同開発した認知機能みまもりAI「M-KENSA」を利用しています。回答発話中の沈黙や声の高さ、時間見当識即時記憶やワーキングメモリなどをチェックすることで「脳の健康チェックフリーダイヤル」よりも詳細な5段階で認知機能の状態が確認でき、認知症の一歩手前の段階も把握することができます。
「脳の健康チェックplus」は以下の手順で認知機能の状態が確認可能です。
① 「0570-012354」へ発信
② 本日の日付を発話 (西暦何年、何月、何日、何曜日)
③ 複数の質問に回答(4分程度)
④ 回答内容や話し方からAIが認知機能の状態を判別
⑤ 判別結果をその場でフィードバック
3.ビジネスモデル
「脳の健康チェックplus」および2022年9月21日よりトライアルを行っている「脳の健康チェックフリーダイヤル」はパートナー企業や自治体との連携を予定しています。
ご契約いただいたパートナー企業や自治体へ認知機能の状態を確認するAI機能に加え、専用番号や利用者の履歴管理機能、関連情報をご案内するためのSMS機能などを提供予定です。
パートナー企業や自治体は、利用者の情報をもとに脳の健康に関するイベントの開催や保険商品の開発などが可能となります。
4.今後の展開
有償トライアルにおける利用率、応答完了率、利用者の年齢層、利用端末、5段階の判別結果などのデータを蓄積し動向や傾向分析を行うことで、パートナー企業や自治体との新たなビジネスモデルの検討および社会実装に向けた取り組みを加速します。
さらに、本年度中に「脳の健康チェックフリーダイヤル」および「脳の健康チェックplus」を法人向けのサービスとしてリリース予定です。
これらを通して、「認知症で不安になる本人・家族・企業が少なくなる社会」の実現に挑戦します。
プレスリリースはこちら(NTTコミュニケーションズ株式会社 2023年9月21日掲載)
※記事公開から日数が経過した原文へのリンクは、正常に遷移しない場合があります。ご了承ください。
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『mHealth Watch』の視点!
今回注目するのは、認知症になる一歩手前の状態を電話でチェックするサービスの有償トライアルに関するニュースです。
NTTコミュニケーションズが提供する「脳の健康チェックplus」は、電話での回答発話をチェックすることで、5段階で認知機能の状態が確認でき、認知症の一歩手前の段階も把握することができるというものです。
この電話での回答発話中では、沈黙や声の高さ、時間見当識即時記憶やワーキングメモリなどをチェックして判定するもののようです。
脳の健康に向けては、脳トレなどのゲームを含めて関心が高いテーマの一つになっています。
MCIについては、MCIの状態を早期に発見し適切な対応や行動変容を促すことが重要と言われており、脳の健康状態を知りたいというニーズも高まっていると言えます。
また、最近では「LEQEMBI®」(レカネマブ)が、アルツハイマー病治療薬として、米国FDAよりフル承認を取得したというニュースも話題になったこともあり、認知症について、注目が集まってきています。
この認知症というテーマについては、予防から発症し進行した以降を含めた場合、当事者だけではなく、家族も含めたケア、サポートが必要なため、通常のヘルスケアのアプローチにプラスして介護などの家族を含めたサポートといった幅広い領域になってきます。
また、この認知症のテーマは、認知症にならないための予防的なアプローチが必要なはずなのですが、あまり予防への意識が高くなく、発症してしまうケースが多いのも事実です。
そのため、今回のような簡単なチェックで認知機能の状態が確認できるサービスは、予防意識を高めるためにも有効な手段だと言えます。
そして、認知機能の状態が確認できた後の予防も含めたアプローチ、ソリューションの提供も重要になってきます。
認知症の予防というと脳トレ的なアプローチが中心に見えますが、実はWHO(世界保健機関)が公表した「認知症予防ガイドライン」では「健康的な食事、運動習慣、禁煙、アルコール摂取の抑制、血圧・コレステロール・血糖コントロール、社会活動」など生活習慣を改善することにより認知症の発症リスクを減らすことができるとされています。
ということは、認知症の予防についても、一般的な生活週病の予防と同じで、生活習慣の改善といったことで予防に向けたアプローチ、ソリューションが提供可能で、脳トレなどの特別なことをしなくても、対応可能だということなのです。
今回のニュースのように、早期発見に向けた状態の見える化の仕組みは必要で、その上で必要なソリューションと結びつけるとことで、より見える化の仕組みの効果的な活用が見えてくるのです。
やはり、ヘルスケアのサービスでは、チェック(見える化)+ソリューションの組み合わせこそが、利用者の課題解決ニーズに応えるための組み合わせになってくるのです。
『mHealth Watch』編集委員 里見 将史
株式会社スポルツのディレクターとして、主に健康系ウェブサイト、コンテンツなどの企画・制作・運営を担当。また『Health Biz Watch Academy』では、「mHealth」のセミナー講師として解説。(一財)生涯学習開発財団認定コーチ。
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