『mHealth Watch』では、ここ最近で公開されたニュースから「注目ニュース」をピックアップし、独自の視点で解説していきます。
今回注目したニュースはこちら!
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“ノンアルコール飲料提供による飲酒量減少プロセスに性差あり ”
ノンアルコール飲料の提供による飲酒量減少効果に及ぼす性差の影響を検証しました。その結果、男女ともに飲酒量の有意な減少が生じましたが、そのプロセスにおいては、男性では飲酒日の飲酒量が減少し、女性では飲酒頻度が減少するという、性差がある可能性が初めて明らかとなりました。
過剰なアルコール摂取は、国連の持続可能な達成目標(SDGs)にも含まれる世界的な課題です。過剰なアルコール摂取を減らすための対策として、ノンアルコール飲料の利用が挙げられ、これまでに本研究チームでは、ノンアルコール飲料の提供により、飲酒量が有意に減少することを報告しています。一方で、減酒効果には個人差が認められ、性差もその要因の一つと指摘されています。そこで本研究は、性差に着目して、ノンアルコール飲料の提供が飲酒量に及ぼす影響を調べました。
アルコール依存症の患者などを除いた20歳以上の成人123人を介入群と対照群に無作為に分け、介入群にノンアルコール飲料を12週間提供し、その後8週間飲酒量の推移を観察しました。介入群と対照群の4週間あたりの平均飲酒量減少率の違いについて男女に分けて検討したところ、男女ともに介入群の飲酒量減少率が対照群を上回ること、またその減少率には性差が認められないことが分かりました。また、飲酒量が減少した要因について、飲酒頻度と飲酒日あたりの飲酒量に着目したところ、男性は飲酒頻度の顕著な減少は認められないものの飲酒日あたりの飲酒量が減少しており、一方、女性は飲酒日あたりの飲酒量の減少がなく飲酒頻度が有意に減少していることが明らかとなりました。
本研究結果は、ノンアルコール飲料の提供による飲酒量減少のプロセスは男女で異なることを示唆しており、過剰なアルコール摂取による健康被害を抑えるためには、性差を踏まえた対策が必要と考えられます。
プレスリリースはこちら(筑波大学 2024年1月15日掲載)
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『mHealth Watch』の視点!
今回注目したのは、筑波大学が調査したノンアルコール飲料提供による飲酒量減少と性差に関するニュースです。
アルコール摂取を減らすための行動として、ノンアルコール飲料はよく用いられる対策の一つです。健康診断の前に、お酒を控えるためにノンアルコール飲料をという人も多いのではないでしょうか?
今回の調査では一時的なアルコール摂取の対策ではなく、アルコール摂取量を抑えるたことを目的とした調査で、ノンアルコール飲料を用いることで男女に関係なく、飲酒量減少率が高まったということです。
しかし、今回の調査では、飲酒量が減少した要因について、飲酒頻度と飲酒日あたりの飲酒量を男女で調べたところ、男性は飲酒頻度の顕著な減少は認められないものの、飲酒日あたりの飲酒量が減少し、女性は飲酒日あたりの飲酒量の減少がなく飲酒頻度が有意に減少したことが明らかになったとのことで、同じアルコール摂取の対策としてノンアルコール飲料を用いても、男女でそのプロセスが異なるということなのです。
今回の調査結果である男女でのプロセスの違いについては、男女での飲酒行動の違いなども影響しているため、解明されていないことが存在していると説明されています。
このように、同じ目的である「アルコール摂取を減らす」ということに対して「ノンアルコール飲料」の活用であっても、その活用方法やアルコール摂取の減らし方は、男女でも異なってくるということで、やはり同じ目的に対する健康行動であっても、やり方、活用方法は異なってくるということなんだと思うのです。
別の見方をすれば、同じ目的に対する健康行動で効果を高めるためには、対象者に合わせたプロセス、取り組み方にしていく必要があるということなのです。
今回の調査結果から、同じ目的に対する健康行動を伝えて対象者に取り組んでもらう際には、性差の違いなども含めたパーソナライズはもちろんプロセスや活用法まで含めた提案が、対象者の目的達成に向けては必要なんだとあらためて感じました。
『mHealth Watch』編集委員 里見 将史
株式会社スポルツのディレクターとして、主に健康系ウェブサイト、コンテンツなどの企画・制作・運営を担当。また『Health Biz Watch Academy』では、「mHealth」のセミナー講師として解説。(一財)生涯学習開発財団認定コーチ。
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