2021年1月27日(水)~29日(金)の3日間に渡り、東京ビッグサイトで『ヘルスケアIT 2021』が開催されました。
1月28日には、一般社団法人社会的健康戦略研究所による『2021年「健康経営ウエルビーイング」元年 ニューノーマル時代のワークエンゲージメントを加速する』講演が行なわれました。本稿ではその模様をレポート致します。(取材・文:小松智幸)
社会的健康戦略研究所活動報告
一般社団法人社会的健康戦略研究所 代表理事、株式会社フジクラ健康社会研究所 代表取締役,CEO 浅野健一郎氏
浅野代表理事による全体の活動報告。社会的健康戦略研究所が捉える「健康」として、身体・精神・社会のバランスが健康を維持する必要条件とし、社会的な健康のうえに個人の精神・身体の健康が維持されると定義。しかし、ベースとなる社会的な健康がもっとも満たされていないことから、社団設立に至った経緯を説明した。現在は、社会的健康度を上げる手法の研究から持続可能な社会実装、国際標準の取得を目指している。また、国民の健康リテラシーを上げるには、若い人たちの意識変化が必要として、学生に対して健康で自律的に働ける人材になってもらうため、職域と学域を連携させた活動なども紹介した。
コロナ禍で健康経営の取り組みで重視したいこと
一般社団法人社会的健康戦略研究所 理事、株式会社富士通ゼネラル サステナビリティ推進本部 健康経営推進部 部長 佐藤光弘氏
佐藤理事をモデレーターに、担当者ユニットの成果報告としてパネルディスカッションが行なわれた。担当者ユニットは18社、19名。企業で健康経営を実践する立場から、大学に在学して健康を学んでいたり、産業保健スタッフ、保健師など幅広い分野のメンバーが集まっている。今回は、担当者ユニットを代表して3名の参加メンバーが登壇した。
「時代をつくる健康な働き方 都築電気の健康経営」都築電気株式会社 奥野洋子氏
都築電気は2016年から健康経営の実践を開始。その一環としてテレワーク勤務規定を導入したが、1年で実践したのは60名。2017年に新社長が就任し、率先して健康経営実践をリードしたことからテレワーク実施者は全社員の1/3に。コロナ禍の現在では、1,500名の従業員全員が在宅勤務を実施している。テレワーク体制にシフトしたことで肩こりや腰痛、眼精疲労など新しく出てきた健康課題に対し、従業員参加の改善コンテンツ制作などを紹介した。
「NECソリューションイノベータの健康経営について」NECマネジメントパートナー株式会社 長瀬桃子氏
2016年の「NECグループ健康宣言」から3年目の取り組み。中期計画で「コンディション向上」と「生活習慣の改善」を主軸に施策を準備してきた。グループ約12,000人、50拠点の規模に対し、2020年度はオンライン研修・セミナー、健康ミッションアプリによる行動変容、健康保険組合と連携した施策などを紹介。
「保健同人社の健康経営」株式会社保健同人社 宮尾亮子氏
社員の7割が女性で、保健師、臨床心理士などの資格者が5割以上のため、健康リテラシーが高い保健同人社。本年度の取り組みは、健康増進手当の支給と独自尺度の開発。エビデンスに基づいて定義した「Well-Being」指標を定義し、サービス化に向けて準備している。
各社の取り組み報告からパネルディスカッションに移行。コロナ禍における課題認識について、各社ともリモート勤務で急に業務スタイルが変わった影響で、家族の時間が増えた等、ポジティブな声が多かった一方で、活動量が顕著に減少。アプリなどで行動変容を促すことの有効性と、対面で行なえない状況だからこそデータ分析の重要性が共通認識になっていた。
社会変化に強い 健康経営・働き方改革
一般社団法人社会的健康戦略研究所、株式会社日経BP 技術メディア広告部 次長 三浦豪紀氏
講演の後半は、日経BP三浦氏をモデレーターに、職域部会の研究者による発表とパネルディスカッションが行なわれた。1年前の「日経ビジネス」掲載記事を挙げながら、コロナ禍を経た社会情勢の変化は、働き方から会社と個人を再定義する機会でもあることを紹介。職域部会からは5名のメンバーが登壇した。
「経営コンサルタントユニットが語る健康経営の要諦」株式会社ラポール、下川修二氏
経営コンサルタントユニットは、健康経営を導入することで企業発展と課題解決を両立するために成すべきことを研究している。企業戦略と健康の関係として、生産性につながる区分は人材の確保、個人・組織の健康、コミュニケーション、ビジョン共有などとの相関を紹介。健康経営推進にあたって、目指す姿への課題をどうやって解決していくのかの活動を行なっている。
「健康経営に取り組む上で目指していること 取り組んでいる際の課題」SMN株式会社 松本裕文氏/江崎グリコ株式会社 平山晃守氏
松本氏は推進のテーマとして「個人と組織のWell-Beingサポート/健康=個人、組織にとってのシアワセ」、「自分事化/組織化できる健康施策/組織文化風土醸成」を挙げ、個人の健康を主眼に置いて結果として組織の健康につなげる取り組みとして、総務の立場から組織文化形成をアプローチしていく方針を紹介。SMN株式会社は、平均年齢32歳。若くて健康経営に関心のうすい層が多いが、ボトルネックに注目するのではなく、賛同の声を積極的に発信していく大事さを説明。
平山氏は、江崎グリコの企業理念である「おいしさで健康」を紹介。それを届ける立場の社員が、心と身体がいきいきできていないと説得力に欠けるとして、社員の健康3要素(運動・栄養・休息)をサポートする施策を挙げた。課題は、関心のない社員の意識と行動変容で、健康を得た先のプラン実現を伝えていく方針を紹介した。
「健康経営に取り組む際の重要なポイント 企業の担当者の困りごとは?」ネオス株式会社 星野克茂/アビームコンサルティング株式会社 堀 舜揮氏
事業者としてネオス星野が登壇。取り組む際に大事な3つのポイントとして「健康経営を位置づけ:文化、風土、事業戦略」、「経営者と健康経営担当者の認識が共通」、「従業員が参加しやすい環境づくり」を挙げ、サービス提供者の立場から「RenoBody」を使ったウォーキングイベントの実施、無料トライアルでスモールスタートして施策担当者と伴走していくスタイルを紹介した。
掘氏は、シンプルに「目的を設定すること」を挙げ、従業員が健康を得た先にある企業の経営課題解決のために目的を整理する重要性を説明。施策担当者の困りごととして、施策を実施しても効果が見えない、経営層とビジョン共有できない、という声が多いが、提供する「デジタルWell-Being」で、従業員のパフォーマンスや健康経営効果を可視化することで意識変化に貢献している事例を紹介した。
コロナ禍のなか開催された『ヘルスケアIT』。来場者の導線や登壇者の飛沫対策など、制限がありながらも熱心に聞き入る来場者も多く、健康経営の関心度の高さがうかがえる催しでした。
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