12月4~5日の2日間、渋谷ヒカリエホール(東京 渋谷)にて『Health 2.0 Asia – Japan 2018』が開催されました。
今回も予防から医療現場、高齢者市場など幅広いテーマをラインナップして、国内外のイノベーターが多数参加しました。
mHealth Watchとして気になったセッションをレポートします。
(取材:渡辺武友)
■日本・アメリカのヘルステック動向
スピーカー:
スティーブ・ノード氏(在日米国大使館)
Matthew Holt氏(Health 2.0)
横倉義武氏(日本医師会)
石見陽氏(メドピア株式会社)
最初にHolt氏より米国のヘルステックの動向、石見氏より日本の動向が紹介されました。続いて横倉氏より次世代医療基盤法などヘルステック導入に向けた取組む、ノード氏より日本と米国のヘルステック推進のための状況などが紹介されました。
ここでは、Holt氏と石見氏による米国と日本のヘルステック動向をレポートします。
アメリカのヘルステック動向/Matthew Holt氏
アメリカのヘルスケアシーンは変革を遂げてきている。
医療機関に訪問したときだけ医療を受けるのではなく、例えば、慢性疾患患者がどこでも医療を受けられるようケアデリバリーの提供がはじまる一方、医療提供体制としてはより複雑になってきた。ケアデリバリーをスムーズに運用するためにテクノロジーが入ってきた。具体的には電子カルテがヘルスケアシステムを支えるインフラになってきた。
現在、このテクノロジーが細分化してきている。分類すると5つのテクノロジーに分けられる。
・データストレージ
クラウドに医療データを貯める。
・トランズアクションレイヤー
電子レコードを活用し医療費をより良い支払いに変えていく。
・データエクスチェンジ
データを1つの機関だけで所有するのではなく、複数の関連する機関(医療施設、保険会社など)で誘導的保有ができるようにする。
・データアナリティクス
どういったデータが何に使えるのかを解析していく。
・インターフェイス
AR、VR、ボイステックなど多くのテクノロジーが加わることで利便性を高める。
このように多くのテクノロジーが関わっていく「テックプラットフォーム」との考え方になってきた。“いつも”見ること、知ることができる環境こそが「テックプラットフォーム」で、ヘルスケアの下支えとなっている。
日本のヘルステック動向/石見陽氏
日本は急激に高齢化が進んでいる社会である。2030年には3人に1人が65歳以上になる。これから国民介護保険を維持しながら医療を提供していかなければならない。
現在、大きな動きが2つある。1つはヘルステックに適切な投資がされるようになってきた。さらに製薬会社が薬を提供するだけでなく、ソリューション提供に向かっている。
もう1が規制の緩和。オンライン診療が解禁され、オンライン服薬指導が認められるなど、政府としてもICTを使って医療の質を担保しながら効率化をはかっていきたい考えである。
日本のヘルステック企業は、アントレペディアのデータベースによると現在831社ある。内44社が上場している。
出資を受けている状況としては、全体の3/4が調達済で、内65社が10億円以上の調達を行っている。近年、新調達の単価が上がってきている。
医師による企業が増えてきている。現在52社がそれにあたり、内8社が10億円以上調達を行っている。医者が起業する時代になってきた。ヘルステックでは医師であったり保健師、薬剤師などの専門職が関わると成功の確率が高まると言われている。
今後はテレヘルスの領域がキーになると予想される。テレヘルスはテクノロジー以上に、サービスのイノベーションと言える。
■インターフェイスとしてのロボット
モデレーター:坂田伸裕氏(獨協医科大学)
デモ:
花村勇臣氏(株式会社ハナムラ)
伊東伸氏(株式会社iKoyoo)
西尾修一氏(株式会社国際電気通信基礎技術研究所)
柴田崇徳氏(産業技術総合研究所)
昨年に続き今年も坂田教授をモデレーターに、「ロボット」に関するテーマが3つのデモが紹介されました。
中でも、今後の課題である高齢者支援として2つのデモがありました。今回は長年の研究成果が実り、高齢者施設で利用されているセラピー用アザラシ型ロボット「パロ」のデモを行った、産業技術総合研究所の柴田上級主任研究員の講演をレポートします。
セラピー用アザラシ型ロボット「パロ」/柴田崇徳氏
日本では福祉用品、海外では医療機器として紹介されているセラピー用アザラシ型ロボット「パロ」は、見た目はぬいぐるみだが、全身に触覚センサがあり、音声認識機能、温度や姿勢の認識センサなどが備わっている。人に触れ合ってもらい、楽しみや安らぎを提供する。
米国ではFDAにて神経学的セラピー用力学デバイスとして、2009年にクラス2の承認を得ている。対象は子供から高齢者までさまざま。
「パロ」には副作用がないので薬と組み合わせて使うことができるので、例えば小児がんの場合、キモセラピーで薬を長時間投与するときに副作用で気持ち悪くなったり、痛みがあったり、不安になったりすることがあるので、そんなときに「パロ」と触れ合うことで、和らげることができる。
認知症の高齢者の場合、不安があり、いつも叫んでいるような患者の例では、「パロ」を渡すとすぐに静かになり、患者は「パロ」に話しかけるようになる。「パロ」により落ち着いたことで、セラピストに自分の内面を話せるようになる。セラピストもどういったことに不安や不満があるのか聞くことができるようになった。
この施設では食事やお風呂の前に落ち着かせるために、以前は向精神薬を飲ませて落ち着かせていたが、効果が出るまでに30分かかったり、薬の副作用でバランスを崩し車椅子から落ちて骨折するなどのリスクがあったが、「パロ」を利用することで、数分で落ち着かせることができ、副作用もおこさないというメリットがある。
これら25年に渡る取り組みで、世界各国で認められて、メディケアや、民間保険会社でも保険適用が受けられるようになった。
次回は2日目のセッションからレポートいたします。
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