『mHealth Watch』では、ここ最近で公開されたニュースから「注目ニュース」をピックアップし、独自の視点で解説していきます。
今回注目したニュースはこちら!
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“2016年、ヘルス関連No.1トレンドは「スマートフォン向けヘルスコネクテッドデバイス」と「ビヘイビアル・ヘルス」”
PwCヘルスリサーチ研究所の年次報告によれば、2016年のヘルスケア分野のトレンドトップ10は、「スマートフォン向けヘルスコネクテッドデバイスの利用」、「ビヘイビアルヘルス(行動健康科学)」への重点的な取り組み、医療情報分析向け高性能データベースなどだ。ヘルスリサーチ研究所は、米国の消費者1,000人を対象にした調査の結果も発表した。
この調査では、「2016年に数百万人の消費者が、初めてビデオ相談を行ない、初めてヘルスアプリを処方され、初めてスマートフォンを診断ツールとして利用することになる」、「このような新しい経験により、時や場所を選ばない夢のケアの実現が始まり、消費者の期待を変え、イノベーションを加速する」としている。
PwCによると2015年は、ヘルスアプリとヘルスコネクテッドデバイスは十分に活用されなかった。しかし、出来高払い方式のケアからの脱却や、ワイヤレス技術の進歩などで来年は状況が変化する。今年のヘルスリサーチ研究所の主な発見のひとつは、2013~2015年の間に医療に重点を置いたアプリの利用が倍増したことだ。「自分のデバイスに、少なくともヘルスアプリがひとつある」と回答した消費者が2013年は16%だったが、2015年は32%に増加した。
このような医療関連のスマートフォン向けコネクテッドデバイスの採用は、一次診療や慢性疾患の管理を目的として利用するユーザーが主導することになるだろう。これらの部門はすでにヘルスコネクテッドデバイス、アクティビティトラッカー、コネクテッド体重計、ヘルスアプリ、オンライン診療を患者に提供している。
医療関連のスマートデバイスやアプリのサイバーセキュリティへの懸念も2016年の大きなトレンドとなるだろう。各企業は消費者の信頼を維持するため、先制措置を取る必要があるだろう。消費者の51%は、「ハッキング事件が起きた場合、あらゆるメーカーのデバイスの使用をためらうだろう」と回答。ほぼ同数の50%の消費者が、「あらゆる医療・健康向けコネクテッドデバイスの使用をためらうだろう」と回答した。
来年、雇用者は、ビヘイビアル・ヘルスを優先することにもなる。PwCによると、毎年メンタルヘルス疾患が米国企業に及ぼす負担は4,400億ドル以上だ。雇用者は偏見などの課題や、メンタルヘルスの啓発活動に焦点を当てている。ビヘイビアル・ヘルスサービスの提供範囲も広がるだろう。遠隔技術を使って専門家と連絡を取り合う一次診療医師が増え、結果として一次診療チームが日常的に発生する行動健康科学問題の管理をサポートすることになる。ビヘイビアル・ヘルス医は、遠隔技術を使って患者と直接つながることになるだろう。
患者もこのトレンドに乗っている。18~44歳までの消費者の72%が、「外来診療の代わりにビデオ診療サービスを利用し、医療提供者とやり取りをする意思がある」と回答した。45歳以上の消費者の場合、この数値は43%に減少する。
2016年のもうひとつのトレンドとなるのは、医療提供者が患者の病状をより詳しく見抜くことが可能になる「ポピュレーションヘルスデーターベース(公衆健康データベース)」だろう。同調査では、医療提供者が患者本人を診断・治療するのに役立つのであれば、患者の83%が医療提供者とデータをシェアする意思があることがわかった。
記事原文はこちら(『mobihealthnews』12月10日掲載)
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『mHealth Watch』の視点
今年はモバイルヘルスアプリサービスの大型買収が続き、来年もモバイルヘルスへの注目が高い状況が継続しそうです。先日、今年の振り返りとしてHealthBizWatchに『今年のモバイルヘルス、再チェックしたい「注目ニュース」』を掲載しましたので、そちらもチェックしてください。
では、来年はどうなっていくのか? 米国で調査結果が発表されたのが、今回のPwCによるものです。
「スマートフォン向けヘルスコネクテッドデバイス」は、mHealth Watch読者の皆さんならすでに馴染み深いものでしょう。もうひとつの「ビヘイビアル・ヘルス」の方が聞き慣れないワードかもしれませんね。「ビヘイビアル・ヘルス」は行動健康科学のことで、心理学が文学として捉えられているのに対し、行動健康科学はサイエンスとして扱われています。日本国内のヘルスケア事業者でも、注目している人が増えているように思います。
11月に開催された「Health 2.0 ASIA-JAPAN」2日目に登場したMount Sinai Health SystemのDr. Yosuke Chikamotoが講演されていた内容も、「ビヘイビアル・ヘルス」と共通するものでした。Chikamoto先生には先日、独占インタビューを行ないました。近々公開するのでご期待ください。
「ビヘイビアル・ヘルス」は、今後のデータヘルスにおいても、問題点を提示しても動いてくれない無関心層へのアプローチなど、とても重要な役割となっていくでしょう。
さて、今年最後の『注目ニュース』となりました。1年間お読みいただき、ありがとうございました。今年もmHealth Watchを通じて、多くの方との出会いがありました。皆さんと直接お会いできるモバイルヘルス勉強会も、来年はさらにパワーアップする予定です。ご期待ください。
2016年もmHealth Watchをどうぞよろしくお願い致します。
『mHeath Watch』編集 渡辺 武友
株式会社スポルツのクリエイティブディレクターとして、健康系プロダクト、アプリ、映像などの企画・制作ディレクションを手掛ける。「Health App Lab(ヘルスアプリ研究所)」所長として健康・医療アプリの研究発表を行う。またウェアラブル機器、ビジネスモデルの研究を行ない、健康メディアでの発表や、ITヘルスケア学会 モバイルヘルスシンポジウムで講演を行う。
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