『mHealth Watch』では、ここ最近で公開されたニュースから「注目ニュース」をピックアップし、独自の視点で解説していきます。
今回注目したニュースはこちら!
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“iPadベースのHIV予防ゲーム、子供達の知識を増加させる”
エイズ関連の学会で発表された198人の青少年が参加したランダム化比較試験についての口頭要旨によると、HIV予防iPadゲーム『プレイフォワード:エルムシティーの物語』をプレイした子供たちは、他のゲームをプレイした子供たちよりもHIVのリスクについてより深い知識を持っていた。この試験に参加した子供たちの平均年齢は13歳。
米国国立衛生研究所(NIH)が出資したこのゲームは、イエール大学でアソシエイトリサーチサイエンティストを務めるKim Hieftje博士と同大学医学部准教授のLynn Fiellin博士によって開発された。
Hieftje博士は、昨年開催された「Games for Health」で、「性交を始める年齢になる前に、青少年にHIV予防についてよく理解させられるだろう適正時期が存在することがわかっています」と述べた。「そこで、子供たちが性的な活動に関わり始める直前のその時期に的を絞りたいと考え、対象年齢を10~14歳としました。この年齢はテレビゲームを良くプレイする年齢でもあります」。
『プレイフォワード』はRPGで、子供たちは自分で作ったアバターを使ってゲームを一定期間プレイする。このアバターで一連のミニゲームをプレイするが、ミニゲームは日常生活における思春期の若者特有の人間関係の問題に対処していく、という大きなメインストーリーに内包されている。Yale Daily News紙によると、プレイヤーはゲームを進めていくにしたがって、コンドームを付けないセックスや薬物・アルコールの乱用について決断を下していく。このゲームは、子供たちが正しい選択をしたかどうかを追跡でき、その決断が彼らの人生をどのように変えたかについて子供たちを啓蒙できる。プレイヤーは過去にさかのぼることが可能で、異なる決断がアバターにどのような別の影響を与えたかを確認できる。
試験に参加した青少年はゲームをプレイする前、プレイ開始6週間後、3ヵ月後にHIVに関する知識を問うクイズ形式のテストを受けた。最初のテストの時点では、HIVのリスクについての参加者の知識に有意な差は見られなかった。プログラム終了後では『プレイフォワード』を遊んだ子供たちが得た得点は対照グループの得点よりも高かった。
MedPage Today紙に掲載されたリポートによると、この研究の発表の際、Fiellin博士は、「子供たちは知識を得たと同時にゲームプレイを楽しんだ」と語った。およそ66%の子供たちがプレイ終了後にこのゲームについて友達と会話し、80%を超える子供たちがグラフィックノベル形式の要素でデザインされたゲームの見た目が好きだと回答。さらに、75%はこのゲームがやりごたえのあるゲームだと感じた。プレイ中にアバターのために下した選択に責任感を感じた子供の割合は88%だった。そして78%の子供たちは現実の生活においてもアバターのためにしたのと同じような選択をするだろう、と回答した。
記事原文はこちら(『mobihealthnews』7月29日掲載)
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『mHealth Watch』の視点
今回注目のニュースは“ゲーミフィケーション”についてです。
この記事が掲載された日、当メディアが主催する「モバイルヘルス&アプリ勉強会」を開催していました。テーマは偶然にも「モバイルヘルスにおけるゲーミフィケーションの成功パターン」。勉強会が終わり、参加者の方からいただいた意見などを整理していた時にこの記事を見たので、悶々としていた“ヘルスケアにおけるゲーミフィケーションのあり方”がだいぶ鮮明になってきたように思いました。
この記事で紹介しているのは、HIV予防のためになにが効果的かの研究です。ターゲットですが、平均13歳とかなり若いです。私が勉強会のなかで紹介したカンファレンス「Games For Health」でも
医療に関連するテーマは多いのですが、なかでも小児がん、若年層のうつ病、同じく若年層のアルツハイマー病など、子供達を対象にした対策としてゲーミフィケーションを研究、活用しています。
大人でも病気に関して学ぶことは難しいです。自分事であってもモチベーションがあるか、または強制力が働いているかでもないと、率先して学べる人は少ないのではないでしょうか? それが子供なら、なおさらです。
そこで検討されたのが
『ゲームを楽しんでいたら目的が達成された = 目的の手段化』
この考え方は病気だけでなく、予防においても活用できます。予防は将来に備えるもので、今起きている課題の解決ではないため、日常生活での優先順位は下がりやすいのです。そこで、どうしても取り組まなければならない、別の理由を作ってあげることが、今後の健康ビジネスでの重要なポイントになってくると言えるでしょう。
『mHeath Watch』編集 渡辺 武友
株式会社スポルツのクリエイティブディレクターとして、健康系プロダクト、アプリ、映像などの企画・制作ディレクションを手掛ける。「Health App Lab(ヘルスアプリ研究所)」所長として健康・医療アプリの研究発表を行う。またウェアラブル機器の研究を行ない、健康ビジネスメディア「ヘルスビズウォッチ」を中心に海外のトレンド情報などを発表している。
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