『mHealth Watch』では、ここ最近で公開されたニュースから「注目ニュース」をピックアップし、独自の視点で解説していきます。
今回注目したニュースはこちら!
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“Practice Fusionによるテレヘルス(遠隔医療)の将来”
クラウドをベースとするEHRデベロッパーPractice Fusion社は、とある案件で「遠隔医療市場への参入のきっかけ」になるとしてRingadoc社を買収し、患者と医師間のコミュニケーション技術を提供する。
Practice Fusionの設立者兼CEOのRyan Howard氏は、プレス声明で「遠隔医療を可能にする要素は3つあります。それは医師、患者、そしてデータです。そしてPractice FusionのEHRは、これらすべてをスケールする規模で保有しています。Ringadocは当社にとってごく自然なパートナーでした。当社の本格的なテレメディスンプラットフォームの開発を前進させ、発熱から脳震盪に至るまで、何百万という患者が医師のところに行かなくても済むようになるでしょう」と述べた。
2010年にローンチされたRingadocは、自動化されたクラウドベースの応答サービスを提供しており、Webブラウザ、Android、iOS アプリを経由して医師がリアルタイムでアクセスでき、診療時間外でもメッセージを送れる。同社は、医者が患者からの連絡に優先順位をつけ、コミュニケーションを集中するサービスも提供している。同社幹部は、この技術はPractice FusionのEHRにダイレクトに統合されるだろう、と述べている。
Ringadocの共同設立者兼CEO、Jordan Michaels氏は、「私は、医師と患者のコミュニケーションを簡単、迅速、費用的に効率化するためにRingadocを作りました。現在、当社はPractice Fusionの一部となりましたので、当社の遠隔医療統合版を加速し、これを現実のものにすることを楽しみにしています」と、声明で述べた。
Howard氏は、「土曜日の深夜、小さい子どもが39℃の熱があるとき、プライマリーケアの医師に診てもらうのに18.5日待たされる、という業界平均はもう選択肢ではありません。Ringadocを買収することで、当社は医師、患者、データをつなげ、良好な健康状態をもたらして生命を救う、という使命を果たし続けることができます」と述べた。
記事原文はこちら(『Healthcare IT News』8月7日掲載)
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『mHealth Watch』の視点
今回注目のニュースは“遠隔医療”についてです。
ここ数年、米国では遠隔医療市場に注目が集まっています。mHealth Watchでも何度も取り上げてきたテーマです。
日本では離島や一部の農村地域を除いて、医療機関へのアクセスが比較的良いため、遠隔医療の必要性が伝わりにくいようですが、広大な土地を有する米国では、医療機関へのアクセスは深刻な問題と言えます。長年、都市部と郊外における「医療格差」が問題視されており、遠隔医療が解決手段として注目されているのです。
数多く紹介される遠隔医療関連のニュースのなかでも、今回特に注目したのがPractice Fusionが参入してきたことです。
Practice Fusionは、2005年に設立されたEHRシステムを医療機関に提供する企業です。米国市場では、特にクリニックなど中小規模の医療機関にEHRの普及に貢献したのが、このPractice Fusionです。彼らは医療業界にフリーミアムモデルを導入することで躍進してきました。
Practice Fusionは、2013年にペイシェントポータル『Patient Fusion』を提供し、すでにEHRを提供している医療機関に対し、新たな価値を提供することに成功しています。そして、次のアプローチが今回の遠隔医療サービスの提供です。今までのシステム提供だけでは成立し難い遠隔医療を、Ringadocの持つサービスと合わせることで、現実的な仕組みを構築できたと言えます。
Practice Fusionは買収発表の際に、2018年までに世界的なテレヘルス市場の規模が現在の4億5,000万ドルから約10倍の45億ドルになる、というIHSの調査研究に言及しています。医療業界の動向を見ていくうえで、Practice Fusionは今後も注目すべき存在、と言えるでしょう。
『mHeath Watch』編集 渡辺 武友
株式会社スポルツのクリエイティブディレクターとして、健康系プロダクト、アプリ、映像などの企画・制作ディレクションを手掛ける。「Health App Lab(ヘルスアプリ研究所)」所長として健康・医療アプリの研究発表を行う。またウェアラブル機器の研究を行ない、健康ビジネスメディア「ヘルスビズウォッチ」を中心に海外のトレンド情報などを発表している。
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