『mHealth Watch』では、ここ最近で公開されたニュースから「注目ニュース」をピックアップし、独自の視点で解説していきます。
今回注目したニュースはこちら!
============================================
“Fitbit、HealthKitからの離脱”
Appleが、様々なアプリとデバイスからのデータを集計する、HealtKit開発者用ツールキットを発表して以来、Fitbitが接続されることは当然と思われていた。Appleは開発者向けカンファレンスで、Fitbitのスクリーンショットを提示していた。最近のインタビューで、Jawboneのスポークスマンは、FitbitをHealthKit経由でJawboneのアプリに接続できる可能性のあるデバイスの例として挙げていた。また、Beth IsraelのCIO、John Halamka氏は、自社の病院がどのようにHealthKitを活用し得るかについて語る際、Fitbitの利用をほのめかしていた。
しかし、どうやらFitbitはプラットフォームを統合する予定はない、と顧客フィードバックフォーラムに投稿した。同社の声明は以下のとおりである。
「現時点で、弊社はHealthKitと統合する計画はありません。HealthKitは興味深い新プラットフォームであり、我々はFitbitの使用体験を改善するような機会を探しながらその成熟を見守ります。現時点では、ユーザーにとって価値のある、他のわくわくするようなプロジェクトに取り組んでいます。我々は積極的にユーザーからの意見に目を通し、製品開発チームに提供しています」。
この声明は、公式ブログへの投稿や報道機関に対するプレスリリース発表もしていない。
業界内外の人々は、フィットネスデバイスを「活動トラッキングデバイス」などとは呼ばず、Fitbitをその略称として使っている。例えば、Halamka氏も、特にFitbit自身が統合するかどうかについて考えていたのではなく、Fitbitがカテゴリー全体を指す一般名称として使っていたのかもしれない。
とは言え、Fitbitが参画しないというのは重大だ。HealthKitはAppleにとってのプラットフォーム戦略だが、すべてのプラットフォーム戦略がそうであるように、Appleが本当にHealthKitを飛躍させたいと思っているのなら、資金を出しての参画は不可欠だ。Fitbitはなぜ、HealthKiと統合したくないのか?
HealthKitは、消費者が第三者のデータソースとそのデータを利用する第三者のアプリを接続できるようにするハブになる、と約束を掲げている。そして、Jawboneが示唆したように、これはFitbitのハードウェアの強みをFitbitのアプリから切り離すことにつながる可能性がある。Jawboneは当初、他社のハードウェアで自社のアプリを試した消費者が、その後 Jawbone UPを購入すること期待して、こうした新エコシステムを受け容れたようだ。しかし、顧客を獲得するのと同じ方法で、企業は顧客を失う可能性もあるのだ。
結局、Fitbitの有利に働いているのは、その知名度であり、この会社の洒落たデバイスには、社名は印刷されていない。Fitbitは、自社のアプリとWebサイト上でブランドを宣伝しているが、HealthKitはそれをFitbitの利用者にとってさえ無意味にしてしまうのだ。
Jawbone、WithingsやiHealthはHealthKitに便乗しているが、Misfit ShineとBasisはまだ統合していない。Basisは自社フォーラムで曖昧な回答をし、MisfitはHealthに接続しているが 現時点では中間データしか送っていない。他のウェアラブルデバイス大手がFitbitの先例に従えば、AppleはiPhone上でまったく魅力のない商品になってしまい、少なくともフィットネス思考のユーザーにとっては、HealthアプリはApple Mapsと同様に意味がなくなってしまうかもしれない。
Fitbitは、確かに顧客が望むならHealthKitに同調する可能性を残したが、現時点では自己の意見に固執するのもありかもしれない。良い仲間がいるかもしれないからだ。
「Fitbitにおいて、我々のミッションは人々がより健康で、より活動的な人生を送ることなので、フィットネスの目標達成を支援するため人々が自分のデータを利用する手伝いをする方法を常に探し求めています。ここ数年間、我が社は開かれたAPIを通じて、Fitbit製品とデータをユーザーが最大限活用できるようにする数百の人気ヘルスアプリ、健康増進プログラム、インセンティブシステム、およびその他のサービスと直接パートナーシップを育み、そのリーダーであり続けてきました。他のアプリケーションとつながるというこの約束のため、HealthKitは我が社にとって興味深いものです。発表以来、我が社ではその機能の利点が明らかにされるにつれ、HealthKitとの統合について評価を行なってきました。
Fitbitは、Fitbit製品をiOS、Android、またはWindows Phoneデバイス、Mac、PCのいずれと同期していようとも、すべての弊社顧客を支援する、と約束し続けます。HealthKitはiOSプラットフォーム上でしか動きませんが、iOSユーザーに加えてAndroid、 Windows Phone、それにMac、PCユーザーが我々のパートナーシップの恩恵を受けられるよう、パートナーとの直接統合も維持する計画です」。
記事原稿はこちら(『mobihealthnews』10月9日掲載)
※記事公開から日数が経過した原文へのリンクは、正常に遷移しない場合があります。ご了承ください。
============================================
『mHealth Watch』の視点
今回の注目ニュースは驚くべきものです。まさかFitbitがHealthKitと連携しないとは誰も思わなかったのではないでしょうか!?
日本にいるとなかなか実感がわきませんが、Fitbitは米国ではかなり大きな存在になっています。ある調査では、「2013年1月初頭~2014年1月初頭までの52週間で、Fitbitは販売されたデバイスの68%を占め、Jawbone UPの販売数は全デバイス全体の19%、Nike FuelBandの販売数は10%を占めていた。その他の活動追跡機器全体で残りの3%となっている」。
先の記事にもあるように、“フィットネスデバイス=Fitbit”とまで認識されています。まるで“携帯音楽プレーヤー=ウォークマン”と言っていた時代があったようなものでしょうか。それくらいのインパクトがあります。
業界のリーダーとなったFitbitとしては、スマートフォン単体でもデバイスの役割を果たせるようになってきたこと、Apple Watchなどのスマートウォッチが、これらデバイスの役割も担ってしまうことなどの危機感もあるでしょう。さらにAppleにひとつの機器として扱われることで、この状況に拍車がかかるのは好ましいことではありません。
今回のFitbitの行動に対し、Appleではストアでの取り扱いを中止したとの報道(『Apple、ストアからFitbit製品の販売停止』mobihealthnews、 10月15日掲載)もありました。海外ではApple Storeで製品が取り扱われるかで、売り上げが大きく違うとも言われています。
今後、HealthKitと連携しないことが、どのように影響が出るのか、動向を注視していきたいと思います。
『mHeath Watch』編集 渡辺 武友
株式会社スポルツのクリエイティブディレクターとして、健康系プロダクト、アプリ、映像などの企画・制作ディレクションを手掛ける。「Health App Lab(ヘルスアプリ研究所)」所長として健康・医療アプリの研究発表を行う。またウェアラブル機器の研究を行ない、健康ビジネスメディア「ヘルスビズウォッチ」を中心に海外のトレンド情報などを発表している。
Comments are closed.