モバイル医療・健康アプリはここ何年間かで人気を集めてきたが、せっかくのトレンドに乗り損ね、この世界に参入できないでいる業界がある。それは製薬会社だ。
Research2Guidance社が発表したレポートによると、世界でも最大手の製薬会社の多くが、自社の健康関連アプリのダウンロード数が伸びない、という問題を抱えている。一度はダウンロードしてもらっても、ユーザーにその会社の医薬品を使い続けてもらうことができていない。例えば、もっとも成功している製薬会社数社に限っても、わずか数種類のアプリを出しているだけで、これを実際に使うユーザーは合わせて100万人に満たない。これとは対照的に、最近の調査によるとGoogle PlayストアやiTunesストアには、10万以上の医療関連アプリが売られており、2015年までには医療用アプリのユーザー数は5億人近くにのぼるだろう、との推計もある。どうしてダウンロード数を伸ばせず、ユーザーを繋ぎ止められないのだろうか? いくつかの可能性がある。
第一に、製薬会社のアプリの多くは現在その会社の製品を使っていたり、これから使う可能性のあるユーザーの助けになるように作られ、その人たちに向けて拡販している。
もし、ある会社のある薬品が幅広いユーザーを獲得したとしても、モバイル医療用アプリの利用者全体に比べれば、ごく小さな割合を占めるに過ぎない。
一方、モバイル医療・健康アプリで成功を収めている会社のほとんどは、スマートフォンを利用する広範な人々を対象にしているので、アプリごとにそのダウンロード数も極めて大きくなるのだ。
これに関連した第2の問題点は、ほとんどのアプリが持つテーマに関連する。すでに述べたように、製薬会社が作るアプリは、その商品である医薬品が効果を持つ個別の病気を患う人のみ関心があるので、アプリの市場普及率は当然限られたものになる。そして第3に、Research2Guidance社のレポートからわかるとおり、医薬品業界ではアプリの位置づけが会社ごとにバラバラであり、ユーザーにとってはひとつの会社のアプリを使ってさまざまなサービスを享受できるような一般的なブランドをまったくイメージできない。こうした要素がすべて絡み合って、この市場に参入しようとしている製薬会社にとっては、ハードルは高くなるばかりなのだ。
記事原文はこちら(『The National Law Review』11月4日掲載)
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