『mHealth Watch』では、ここ最近で公開されたニュースから「注目ニュース」をピックアップし、独自の視点で解説していきます。
今回注目したニュースはこちら!
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“認知症による徘徊の解明を進める研究グループを支援するモバイルゲーム『Sea Hero Quest』”
Deutsche Telekom社が発売した『Sea Hero Quest』というモバイルゲームの狙いは、研究グループの空間ナビゲーションに関する理解向上に役立てることだ。このアプリは、Alzheimer’s Research UK(慈善団体)、University College London、University of East Anglia、ゲーム開発会社Glitchersによる共同開発だ。
空間ナビゲーションの喪失は、認知症の初期症状のひとつ。Deutsche Telekomによると、人が道に迷う時、それが認知症の初期症状によるものなのか、単なる加齢によるものなのか判別できないという。アプリ開発者の狙いは、このゲームを使った空間ナビゲーションの指標作りにある。
Deutsche Telekomの最高ブランド責任者Hans-Christian Schwingen氏は、声明で「誰でも自分の時間を割いて認知症分野の飛躍的進歩に貢献できる方法があるはずだ、と確信しました。同時に実規模で実現し、真の効果を上げることを望むなら、すべての参加者にとって面白いものでなければならないことも理解していました。ずっと遊び続けてもらえる物を作る必要があったのです」と述べた。
『Sea Hero Quest』は、iOSとAndroidデバイスに対応しており、北極の川や黄金海岸、秘密の沼地などを配した迷路を切り抜けていく。ユーザーは日誌の記憶を集めて、不思議な生き物を追いかけ、交換して装備をアップグレードしていく。
Deutsche Telekomによると、2分ゲームをプレイすることで従来の研究の5時間分に相当するという。また、10万人が2分間プレイすれば、研究所を中心とした研究の50年分を超える成果と同等の結果が得られる。このゲームが収集するすべてのデータは匿名化され、ドイツのT-Systemsデータセンターに保存される。
記事原文はこちら(『mobihealthnews』2016年5月4日掲載)
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『mHealth Watch』の視点
4月25日公開の注目ニュースで、“プレイすると現実世界の量子コンピューター開発を手助けできるゲーム『Quantum Moves』”を紹介しました。専門的な知識がなくても、ゲームを楽しんだら量子コンピューターの開発を手助けできるというものです。今回は、同様の発想でヘルスケアに役立てるものが発表されましたのでご紹介します。
認知症の最初の症状として“空間ナビゲーションの喪失”があります。“空間ナビゲーション”とは、目に見える目標物から頭のなかで地図を描き、自分がどこにいて、どのように目的地へ行くかを導き出すことを指します。
今回の取り組みは、「人が道に迷う時、それが認知症の初期症状によるものなのか、単なる加齢によるものなのか判別できない」ため、その指標を作るための調査です。通常の調査では、被験者を募ってデータを蓄積していきますが、時間も費用も膨大にかかってしまいます。今回はその課題をクリアするための取り組みとなります。
当然、ゲームならなんでもいいわけではありません。皆がやってみたいと思えるものでなければデータは蓄積されません。実はここが、ヘルスケアにおけるゲーミフィケーションの最大の壁だと思っています。ゲーミフィケーションを取り入れたアプリは沢山ありますが、支持されているのはごくわずかです。『Sea Hero Quest』が皆に利用されるものになるのか!? 注目です。
「ゲーム」になっていればなんでも楽しんでくれるはず、という決め付けはそろそろ辞めたいですね。
『mHeath Watch』編集 渡辺 武友
株式会社スポルツのクリエイティブディレクターとして、健康系プロダクト、アプリ、映像などの企画・制作ディレクションを手掛ける。「Health App Lab(ヘルスアプリ研究所)」所長として健康・医療アプリの研究発表を行う。またウェアラブル機器、ビジネスモデルの研究を行ない、健康メディアでの発表や、ITヘルスケア学会 モバイルヘルスシンポジウムで講演を行う。
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