『mHealth Watch』では、ここ最近で公開されたニュースから「注目ニュース」をピックアップし、独自の視点で解説していきます。
今回注目したニュースはこちら!
============================================
“研究:Noomアプリは、従来の糖尿病予防プログラムに匹敵する”
「British Medical Journal Open Diabetes Research & Care(英国医療ジャーナル・オープン糖尿病研究)」が発表した研究では、Noomのアプリを使用している人の64%が、5%以上の減量に成功した。米疾病対策センター(CDC)の従来の糖尿病治療プログラムや他の糖尿病予防プログラムと比べると、大きな成功を収めている。
研究チームは、糖尿病予備軍と診断された太り過ぎや肥満の成人参加者43名について調査した。参加者は24週間、Noomのプログラムを受講、厳格なモバイルプラットフォームを通しコーチングを受けた。結果として体重が減り、忍耐力がついた。
参加者は食事を記録、体重をトラッキングし、アプリを通してコーチングを受けた。また、アプリの他の機能を頻繁に使用し、グループにメッセージを投稿することで社会的なサポートも促進させた。参加者の大半である84%の人がプログラムを終了し、グループでは24週間で体重が7.5%減った。
Noomの心理学局長Andreas Michaelides博士は、声明で「モバイル糖尿病予防プログラムの研究では、食事の記録、継続的な体重チェック、コーチングにより大きな効果が見られ、個人が直接医師から受ける糖尿病予防プログラムと同様の効果があった」と語った。
Noomはヘルス&フィットネスプログラムの大手だが、生活習慣を変えるプラットフォームを開発し、CDCの糖尿病予防プログラムと協力して慢性病やその予備軍の治療に乗り出した。初日からCDCがモバイルおよびオンライン糖尿病予防プログラムを認識し始めたため、Noomが使用可能となった。また、同社は拡張性が高いことを確信している。
記事原文はこちら(『mobihealthnews』2016年9月8日掲載)
※記事公開から日数が経過した原文へのリンクは、正常に遷移しない場合があります。ご了承ください。
============================================
『mHealth Watch』の視点
日本でも展開しているNoomを使った英国での調査に関する記事です。Noomのどのアプリを使ったものか触れられていませんが、CDCの例を挙げていることからも、おそらく『Noom Health』のことではないかと思われます。
ご覧のとおり、研究結果に対して高い評価を得ています。特に注目なのが、調査対象者が「糖尿病予備軍」であることです。予備軍ですので、まだ糖尿病と診断されてはいません。通常、予備軍は発病した人と比べ、「まだ病気ではない」と意識が働くため、モチベーションはあまり高くはありません。予備軍へのアプローチがもっとも苦労します。メタボ予備軍が、なかなか動いてくれないのと同じ論理ですね。
Noomの疾患向けプログラムの取り組みとして、疾患ごとの知識コンテンツを用意するだけでなく、自ら取り組めるよう、コーチやコミュニティーなど、人が介入することがポイントとなり、継続利用につなげています。
またフルに人が関わるのではなく、オンラインの仕組みを活用して自動化できるところはAIに、要所要所に人が関わることでコストを抑えることに成功しています。
Michaelides博士は、「結果としてわかったのは、従業員や医療費を支払う人にとって、ヘルスケアの費用を大きく軽減できるチャンスがあるということだ。それはNoomの糖尿病予防プログラムのような、モバイルで生活習慣を変えるプログラムを実行することにより可能になる。CDCによる直接受講の糖尿病予防プログラムの結果と比べても明らかで、費用も安く、人材を見つける難しさもない」とコメントしています。
単なる自動化ではなく、どのように仕掛けると対象者が継続しやすいか? の視点で検討することが望まれます。
このところどこに行っても、「アプリは文字を減らし、直感的に使えないとダメだ」との固定観念で語られることがあります。ヘルスケアのアプローチとしても、果たしてそうなのでしょうか? ユーザーが継続するための視点で、今どきの常識を壊していくことも必要になるでしょう。
『mHeath Watch』編集 渡辺 武友
株式会社スポルツのクリエイティブディレクターとして、健康系プロダクト、アプリ、映像などの企画・制作ディレクションを手掛ける。「Health App Lab(ヘルスアプリ研究所)」所長として健康・医療アプリの研究発表を行う。またウェアラブル機器、ビジネスモデルの研究を行ない、健康メディアでの発表や、ITヘルスケア学会 モバイルヘルスシンポジウムで講演を行う。
Comments are closed.