『mHealth Watch』では、ここ最近で公開されたニュースから「注目ニュース」をピックアップし、独自の視点で解説していきます。
今回注目したニュースはこちら!
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“研究:シンシナティ小児病院で、アプリが青少年の服薬アドヒアランスを向上させた”
服薬リマインダープラットフォームを開発しているMedaCheck社は、Cincinnati Children’s Hospital Medical Centerと共に、服薬アドヒアランスの研究を実施。デジタルツールは、青少年の間の投薬使用を大きく改善させたことを突き止めた。
この研究では、病院の外来クリニックで慢性的な頭痛で治療を受けている13~20歳の青少年40人を調査。頭痛薬を服用する患者は、継続的な治療のリマインダーのために、「MedaCheck」アプリを利用した。患者が薬を飲まなかった場合、通知とフォローアップの電話が保護者にも指定された介護人にも行くようになっていた。「MedaCheck」アプリもサポートの電話も利用する患者のアドヒアランスの中央値は、85%以上だった。通常のアドヒアランス率は40%台と低いため、85%の数値は意義深いものだ。
MedaCheckの最高経営責任者で設立者のJeffrey Shepard氏は、「伝統的に、アドヒアランススコアは低いのが一般的ですが、アプリ活用は特定の年齢層には実にうまくいったケースです。とにかく彼らはスマートフォンをいつでも携帯していますから」と語った。
「一般的に言えば、スマートフォンは青少年たちが喜んで触れ合うものであるばかりでなく、アプリを使うことは、彼らに別に個人としての満足度を与えます。心理的レベルで、青少年の患者に自立心を与えることができたため、本当に彼らにフィットしました」。
患者が薬の服用をし損なわない限り、保護者には通知は行かないので、常に行動を監視されなければならない人と比べて、彼らは自立した若者だと見てもらえることが多かった。
記事原文はこちら(『mobihealthnews』2016年9月22日掲載)
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『mHealth Watch』の視点
製薬会社の方と話すと、服薬アドヒアランス(内服尊守)は必らずと言っていいほどテーマに上がります。服薬アドヒアランスを達成、改善するためにサービス提供を専門に行なうMedaCheck社でも、簡単にはクリアできない課題のようです。
今回行なった調査では、ターゲットを絞り込むことで、より効果的なユーザー層を発見することができました。今回の取り組みは非常に有意義なものであったと言えます。
モバイルヘルスの取り組みで勘違いしやすいのが、「スマートフォンアプリなら機能的に達成できる」との提供者視点で考えやすいことです。確かに通信環境を活用することで、常に持ち歩くスマートフォンならいつでも情報を届けることができます。しかしターゲットとするユーザーがうまく情報を受け取り、活用することができるのでしょうか? ターゲットとする層は、思っている以上にITリテラシーは高くないこともあります。ターゲット層によっては、ITを使わない方が良いとの選択もあっていいのではないでしょうか?
MedaCheck社は慢性疾患の高齢者のためにサービスとしてスタートしましたが、当然アプリでは、思ったほどの効果が挙げられなかったようです。今回の調査では上記とは逆に、すでにある機能を活用して適したユーザーを見つけ、彼らがなにを評価してくれているのか、深掘りしています。
小児病院の健康テクノロジー研究主任Kevin Hommel氏は、コメントとして「彼らは年齢的にも反抗的な面を持っており、もっと自立しようと努力しています。さらに保護者も自立を促します。しかし私たちには、いつ彼らに適切な情報を提供すべきか、良いデータがありません。青少年は、認識的にも情緒的にも、なにか煩わしいことを言われたくないと思っている時期でもあります」と述べています。
適切なユーザーを見つけたら、そのユーザーにとって、もっと価値あるものになってもらうための追求が、今後そのサービスをブレイクさせるか、重要なポイントになっていきます。
『mHeath Watch』編集 渡辺 武友
株式会社スポルツのクリエイティブディレクターとして、健康系プロダクト、アプリ、映像などの企画・制作ディレクションを手掛ける。「Health App Lab(ヘルスアプリ研究所)」所長として健康・医療アプリの研究発表を行う。またウェアラブル機器、ビジネスモデルの研究を行ない、健康メディアでの発表や、ITヘルスケア学会 モバイルヘルスシンポジウムで講演を行う。
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