『mHealth Watch』では、ここ最近で公開されたニュースから「注目ニュース」をピックアップし、独自の視点で解説していきます。
今回注目したニュースはこちら!
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“Akili Interactive Labs、東アジアでの販売のためシオノギ製薬がパートナーに”
ボストンを本拠にADHDや自閉症スペクトラム障害を持つ子供向けにデジタルゲーム型治療を提供するAkili Interactive Labs社が、自社デジタル治療製品の東アジアにおける展開支援パートナーを見つけた。
発表されたこの新しい戦略的パートナーシップにより、大阪に本拠を置く製薬会社シオノギ製薬がAkili Interactive Labsの主要2製品『AKL-T01』、『AKL-T02』の日本と台湾における商品化、マーケティング、臨床開発、承認申請を引き継ぐことになる。
Akili Interactive Labsは同治療薬について、流通、データ収集および保管、研究開発および技術サポート責任の主導権は維持する。これらについてAkili Interactive Labsは、デジタル治療薬専用に設計され、今年初めにCES 2019でティザー公開を行った開発中のプラットフォームを通じて対処する予定だ。
「シオノギ製薬は、日本特有の規制、マーケティング、販売の仕組みに関して深い専門知識を持っています。同社がこういった役割を主導してくれることを嬉しく思っています。シオノギ製薬としては当然ながらこれまで販売したことのない、新しいタイプの製品になるので、こちらからもインプットをたくさん入れさせてもらっています」と、Akili Interactive LabsのCEO兼共同創設者であるEddie Martucci氏がMobiHealthNewsに語った。
契約条件にはシオノギ製薬からAkili Interactive Labsへの一時金2,000万ドルの支払いが含まれており、Akili Interactive Labsにはさらに開発および商業上のマイルストーンペイメントとして最大1億500万ドルを追加で受け取る権利がある。同デジタル治療会社はさらに、日本と台湾での製品販売に対する「多額のロイヤルティ」のほか、現在進行中の製品開発に対し資金援助も受け取ることになる。日本と台湾以外では、Akili Interactive Labsが自社製品のすべての商品化および開発の権利を保持することに変わりはない。
Akili Interactive Labsはここ1年ほどにわたり、自社の小児ADHD治療薬『AKL-T01』のFDA承認取得を積極的に追求しており、主張の裏付けとなる臨床的証拠も相当数有している。同社は昨年、最新の資金調達ラウンドで6,800万ドルを調達した。さらにはフィラデルフィア小児病院によって最近行われた予備研究によって、デジタルゲーム型治療が実行可能であり小児患者の支持も高いという証拠も見いだされた。
記事原文はこちら(『mobihealthnews』2019年3月7日掲載)
※記事公開から日数が経過した原文へのリンクは、正常に遷移しない場合があります。ご了承ください。
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『mHealth Watch』の視点!
製薬会社がデジタルヘルスを自社製品やサービスとして扱う例は増えてきました。真面目な記録管理が中心である中、ついに“ゲームが治療薬”として、日本にも入ってくることになります。
Akili Interactive Labsは2011年に設立され、一貫してデジタルゲームの治療活用を追求してきました。2014年にはアルツハイマー病の早期発見に役立てる「Project EVO」がスタートし、当時はPfizerがパートナーとなり臨床試験をはじめていました。Akili Interactive Labsはデジタルゲーム治療の先駆けとなる存在と言えるでしょう。
デジタルゲームによる治療は、医療に関して精通する製薬会社にとって初めて扱うタイプの製品であるため、国内における医療保険対象に向けた取り組み、医療関係者や患者への理解と利用促進をどう進めるかは課題になるでしょう。初めてだからこそこの経験は「生みの苦しみ」です。
しかし、この取り組みを他社より先にやることで、先行優位性が生まれます。この先行優位性は収益においても大きなアドバンテージになります。
シオノギ製薬の今回の取り組み、期待して見ていきたいと思います。
『mHeath Watch』編集 渡辺 武友
株式会社スポルツのクリエイティブディレクターとして、健康系プロダクト、アプリ、映像などの企画・制作ディレクションを手掛ける。「Health App Lab(ヘルスアプリ研究所)」所長として健康・医療アプリの研究発表を行う。またウェアラブル機器、ビジネスモデルの研究を行ない、健康メディアでの発表や、ヘルスケアITなどで講演を行う。
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