『mHealth Watch』では、ここ最近で公開されたニュースから「注目ニュース」をピックアップし、独自の視点で解説していきます。
今回注目したニュースはこちら!
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“価値に基づくケアと医療技術イノベーションの展望”
mHUBのMedTech Acceleratorのエグゼクティブ ディレクターであるMonica Vajani氏が、イノベーターがヘルスケアの価値に基づくケア(Value Based HealthCare:以下VBHC)へと移行するのをmHUBがどのように支援しているかについて説明した。
「私が心臓機器の担当者として働き始めた頃は、機能の多さと複雑さゆえに、最も高価なインプラントが最良であると考えられることが多かったです。私が退職する頃には、ほとんどの病院で価値分析委員会が設置され、価格だけに依存するのではなく、各機能の具体的な利点を示すことが求められていました。この経験から、私は医療分野でVBHCへのシフトが起こっていることに気付かされました。VBHCとは、画一的な取引システムよりも患者の転帰を優先することで、医療の現状を一新させる経済モデルです」
「考え方は単純で、医師が診察や処置ごとに報酬を得る(「サービスごとの料金」)のではなく、医療提供者が個々の患者に最善のケアを提供することが奨励され、その結果、ケアが個別化され、前向きかつ効果的になることが保証されるのです。医療提供者は、質の高いケアを提供することで報酬を得ることができ、理論上、医療システム内での不必要な処置や時間が削減され、より持続可能な医療システムへの道が開かれます」
「これを実現した例は数多くあります。例えば、医療提供者が、患者が何度も採血に来ることを避けるためにケアを調整したり、疾病管理プログラムを調整したり、何より、病気の進行を避けるために可能な限り予防治療に重点を置く例です。現在、私はmHUBでMedTechスタートアップ・アクセラレーターを率いる役割において、VBHC環境で成功し、より良い患者の転帰と全体的な医療費削減をもたらす、新しい機器を特定し育成する責任を負っています」
「VBHCは、優れた医療転帰をもたらす新技術の採用を奨励しています。私は日々、創業者や医療システムの関係者が、遠隔地と従来のケアセンターの両方で、ケア提供について異なる考え方を始めているのを目の当たりにしています。ここではイノベーションが活発な分野と、mHUBアクセラレータを通じて進化し、mHUB Venturesから投資を受けた連携テクノロジーの例を紹介します」
効率的なリソース利用
外科手術中に使用される器具によって、合併症や回復時間が減少し、医療リソースの使用が最適化される。機器の精度と効率が高まると、患者の回復時間が改善され、早期退院や入院期間の短縮につながる可能性がある。
mHUBのポートフォリオ企業であるEndoShunt社は、外傷外科医が出血をより効果的に管理し、手術中の合併症を減らし、回復時間を最小限に抑えるのを支援する。これは、患者の生存率を向上させつつも、回復の早期化、入院期間の短縮、医療リソースの使用の最適化を実現することで、VBHCを直接支援するものである。
診断の強化
人工知能と機械学習を活用した高度な診断ツールを利用することで、より早く、より高い精度で病気を発見することができる。こうした技術革新により、タイムリーな介入が可能になり、患者の予後改善につながる。
mHUBのポートフォリオ企業であるVasowatch社は、出産中の母親の産後出血リスクを継続的に監視する独自のアルゴリズムを開発している。このプラットフォームは、産後出血を予防することで、生命を救うだけでなく、費用のかかる緊急介入を減らし、VBHCを直接支援する。
記事原文はこちら(『MedCityNews』2024年8月29日掲載)
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『mHealth Watch』の視点!
今まで何度か特集してきました“ヘルスケアの価値に基づくケア(Value Based HealthCare:以下VBHC)”の現状を紹介した記事です。
VBHCは、医療に留まらず、ヘルスケア全体を大きく改革するものです。今までのヘルスケアが否定されるのではなく、今まで別々のものとされることが多かった予防、医療が組み合わさってこそ実現するものになります。
今回の記事中でもVajani氏のコメントにありました、「何より、病気の進行を避けるために可能な限り予防治療に重点を置く例です」
まさに医療行為だけでは、VBHCには到達できないのです。
例えば、生活習慣病の多くが治療だけでなく、患者による生活習慣の改善が求められます。しかし生活習慣病患者の多くが、そもそも理想とされる生活習慣(適度な運動、バランスのよい食事など)が苦手だったため発症しているケースも多く、そのような人が簡単に適切な生活習慣を取り入れるのは難しいのが実態です。
そこで役立つのが予防領域での取り組みです。ダイエットしたいが何度も挫折している。運動を続けたいが3日坊主になってしまう。このような人たちをクライアントにサービス提供をしてきたノウハウは、生活習慣病患者にも活かすことができるのです。
今回の記事では、医療現場におけるVBHCへの新たな取り組みが紹介されいてますが、明確に予防が重要であることも記載されています。
皆さんのビジネスは、今後日本でも導入されるであろうVBHCに活かすことができますので、感度高く、VBHCの動向を捉えておいてください。
『mHeath Watch』編集 渡辺 武友
株式会社スポルツにて健康ビジネスにおけるマーケティングに関するコンサルティング、一般社団法人 社会的健康戦略研究所の理事として、ウェルビーイングの社会実装方法の研究を行う。またウェアラブル機器、健康ビジネスモデルに関する健康メディアでの発表や、ヘルスケアITなどで講演を行う。
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