7月25~27日の3日間にわたって開催された『第3回ウェルネスフードジャパン』。本レポートでは、初日に行われた基調講演「健康経営を成功させるための本質を探る」の模様をお送りします。(取材:岩隈七重)
健康経営に役立つ国内外事例
株式会社スポルツ 渡辺武友(mHealth Watch)
「健康経営を成功させるための本質を探る」セミナーのトップバッターは、mHealth Watchの渡辺が登壇。3社の講演に先立ち、「健康経営のあるべき姿」をキーワードに国内外の取り組み事例を紹介した。国内事例では、タニタ社の「タニタ食堂」を紹介。黒字化を達成しており、健康経営のヒントが詰まった事例だという。同社が初めに取り組んだことは、ダイエットの決定版を作り、まずは自社で実施した。ポイントは、共感ストーリーをつくっていること、そしてそのストーリーをベースに市場にアプローチし、ブランド価値向上につなげている。
海外事例では、提供者の目的・施策・評価の視点からVirgin Pulse社を紹介。Virgin Pulseは、「企業の目標達成のため従業員エンゲージメントを高める」「企業に健康文化を根付かせる」の2つを企業目的として掲げている。その施策としては、3つのサービス「Core」「Ignite」「Engage」を紹介した。同社が重要視していることは、企業が抱える人材課題までを共有し、その解決に役立てるかまで踏み込んでやること、そしてそれを踏まえた上で適したサービスを選択することだという。
株式会社フジクラの健康経営への取り組み
株式会社フジクラ CHO補佐 浅野健一郎 氏
今回スペシャルゲスト講師として登壇した浅野氏。なぜフジクラ社は健康経営をしているのか、事業成績と健康経営の関係、同社の様々な取り組みや実際の活動からわかってきたことなど盛りだくさんな内容を紹介した。
同社のゴールイメージは「お客様から感謝され、社会からは高く評価され、社員はいきいきと仕事している」とし、社長と従業員が共有しているという。浅野氏は、健康経営の活動を強化していくとコスト(人件費)がかかり、抑制がかかることで継続していくことが難しくなってくる、健康経営の施策をコストから投資へ概念を変える必要性があると話した。
同社の健康経営は「個人の自発的な健康活動に対する積極的な支援」「組織的な健康活動の推進」の2つのアプローチでPDCAを回していく。また、階層別の各種施策を健康層から高リスク者層まで全階層に向けて実施しているのが特徴だ。
伊藤忠商事株式会社の健康経営の取り組み
伊藤忠商事株式会社 情報・金融カンパニー 情報・通信部門 情報産業ビジネス部 ITビジネス第三課 宮本剛 氏
伊藤忠商事の健康経営の変遷と取り組み内容について紹介した。同社では新中期経営計画の中でも「健康経営No.1企業」を3つの柱の一つとして提示している。生産性向上を阻害していたもの(残業の常態化、酒席の回数と拘束時間、自己管理に対する意識の低さ)の意識・行動を変革するために人事部が様々な施策を導入してきた。各施策の紹介では、「朝型勤務」の実施で効果的な仕事の進め方への意識を高め、「110運動」により社内での酒席による拘束時間を減少させ、「Re:Bodyアプリとスタイルアッププログラム」により健康を中心とした個人の自己マネジメントの向上を進めた。
施策の効果としては、全社員のヘルスマネジメントを支援するIoTツール「Re:Body」と、若手の生活習慣病予備軍を対象とした「スタイルアッププログラム」をセットで導入した結果、体重減少に加え意識の変化が見られたと紹介。宮本氏も実際にスタイルアッププログラムを体験されて効果を実感しているようだ。
同社は、健康経営と働き方改革において各種の受賞を受けるのみでなく、労働生産性の向上を達成している。また、社員が安心して働けるよう、がんに対する施策も実施しているという。安心を従業員だけではなく、その家族にも与えられるものであり、宮本氏は、ロイヤリティに寄っている施策が多いのかもしれない、と締めくくった。
浅野氏から伊藤忠商事の健康経営に対し「伊藤忠商事さんは心理的な部分に響くアプローチをとっているからこそ、良い結果に結びついているように見えた」と講演内容を振り返り感想を述べた。
株式会社日立製作所の健康経営の取り組み
株式会社日立製作所 社会イノベーション事業推進本部 スタートアップ推進センタ健康経営プロジェクト プロジェクトリーダー 川上昌毅 氏
最後の登壇となった川上氏は、新たに健康経営で事業をスタートさせるにあたり、社内で研究し学んできたことを発表した。
「健康経営ソリューションを自分たちでつくって皆さまに届けていきたい!」と、現在実施している実証、健康経営ソリューションの詳細について紹介。同社では健康層までを含めた取り組みをしていかないといけないと考えている。2017年7月から施策の実証をスタートし、現在も継続中だという。今後は日立グループ全体に向けて展開を継続し、将来的には経営的アウトカムを目指していくと語った。
日立が考える健康経営のポイントはリズム。同社の「生活リズムプログラム」は、ヘルスコーチングを活用しながら、生活・仕事のリズム、行動のリズム、コミュニケーションのリズムを身につけることをコンセプトとしている。同プログラムは、アクティブレストルーム、SNSオンラインコミュニティ、アプリとリストバンドをセットとした取り組みだ。その中の一つであるアクティブレストルームでは、カラダを動かしてリフレッシュしたり、補食を摂って食事リズムを整えたりと、Face to Faceのコミュニケーションがとれるリアルの場として提供している。仲間と支えあって気付きを与え、継続を支援するしくみでもある。最初はほとんど人が集まらなかったようだが、イベント実施や口コミで広がっていき、利用者増につながっている。
浅野氏から日立製作所の取り組みについて、「行動ベース、心理ベース、どこまで落とせるかで効率的な施策になると思う。そこを地道に取り組まれているのが素晴らしい。会社でやるメリットとBtoCでやるメリットは違いがあり、会社だと仲間をつれてくるピア効果が生まれ、近くの人たちが楽しんでいるだけで周りが巻き込まれていく」とコメントした。
※mHealth Watchサイトの健康経営コーナーでは、健康経営キーパーソンインタビューを連載しております。ご興味ある方はそちらも是非チェックしてみてください。
<バックナンバー>
2018/07/20
健康経営キーマンインタビューVol.3 帝人株式会社 濱崎洋一郎 氏
2017/06/20
健康経営キーマンインタビューVol.2 株式会社富士通ゼネラル 佐藤光弘氏 石田貴久氏
2017/03/31
健康経営キーマンインタビューVol.1 株式会社フジクラ 浅野健一郎 氏
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